― 光は、すべてを包みこむ ―
水が静まり、風が止むとき、
世界は光の中へ沈んでいく。
鮭の旅は終わり、そしてまた始まりへ。
光は、すべての命が還る場所。
目次
☀️ 光の記憶
朝の川に差し込む光は、命の始まりの合図だ。
水底で孵った稚魚たちは、まだ空を知らないまま、
光の方向だけを頼りに世界を覚えていく。
鮭の旅は、いつだって光とともに動き出す。
光は、水に映る“時間の記憶”でもある。
過ぎていった季節のぬくもり、戻ってくる命の気配。
それらをすべて抱きしめるように、川は今日も光る。
💫 命の輪
鮭の一生は、まっすぐではなく円を描く。
生まれた川へ戻り、命を渡し、静かに消えていく。
その流れは終わりではなく、次の季節を呼ぶ“始まり”だ。
命は巡り、形を変えながら続いていく。
川辺では、去った命と生まれた命が同じ光を受けて揺れている。
その重なりこそが、世界のやさしさなのかもしれない。
🌊 海と空のあいだ
海の上を渡る影が、波を柔らかく揺らす。
鳥の羽ばたきと光の反射が混ざり合い、境界が消えていく。
海も空も川も、すべてがひとつの呼吸でつながっている。
鮭の記憶は水に溶け、雲になり、雨となって川へ戻る。
世界はその巡りをくり返しながら、静かに息をしている。
終わりも始まりもなく、ただ流れだけが続いていく。
🌌 永遠の流れ
夕暮れの海は、金と群青のあいだで揺れている。
その境界に立つと、時間の音がふっと消える。
光が水を包み、世界はひとつの風景になる。
鮭の旅も、人の旅も、その流れの中にある。
永遠とは、止まることではなく、変わりながら続くこと。
命は光へ還り、またどこかで目を覚ます。
そしてまた、新しい季節の流れへと泳ぎ出す。
🌙 詩的一行
光が沈む川面で、命の気配だけが静かに揺れていた。
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