リス12：手のひらにのる野性 ― 静かな共存 ―

リスは、人の暮らしのすぐそばにいる。
公園の木の上を駆け、落ち葉の上を走り、
ときに手のひらのクルミを受け取る。
それでも、その目の奥には森の光が宿っている。
リスは、人の世界に馴染みながらも、野性の時間を生きている。

森や公園でリスに出会うとき、
その距離はわずか数メートルしかない。
人が差し出す木の実を受け取ることもあるが、
それは長い時間をかけて生まれた信頼のかたち。
リスにとって人は、森の一部であり続ける存在だ。

人とリスのあいだには、見えない境界がある。
それを越えすぎると、野性は失われてしまう。
餌を与えすぎず、距離を保ち、観察すること。
その静かな関係こそが、本当の共存を育てる。

都市の中の緑地や森に生きるリスたちは、
人の暮らしと自然のあいだにある“隙間”のような場所にいる。
その存在は、私たちがまだ自然の中に生きている証でもある。
手のひらにのる野性——それは、やさしさと距離の調和の象徴だ。

手のひらの温もりの中に、森が息づいている。