リス1：リスという存在 ― 森に息づく小さな記憶 ―

森の中で、最も軽やかに動く哺乳類のひとつがリスだ。
前足と後足の長さが異なり、跳躍に特化した体。
大きな尾は体温を守り、バランスをとり、仲間への合図にも使われる。
森の枝の上で生きるために、体そのものが森と調和している。

リスの指は五本。鋭い爪で木肌を確実に掴み、
枝から枝へと跳ね渡る。
大きな黒い目は、広い視野と距離感を見極めるため。
尾は空気を切る舵であり、体を包むマントでもある。

その姿は、森の中で生きるために磨かれた形そのものだ。

リスは昼行性で、朝と夕にもっとも活発になる。
木の実、種子、若葉、キノコなどを食べ、
時には樹皮をかじり、土を掘る。
春には巣を修理し、秋には食料を集める。

その一連の動きが、森の時間を刻んでいる。

リスが埋めた木の実のいくつかは忘れられ、
翌年、芽を出して新しい森をつくる。
食べることと育てることが、同じ行為の中にある。

森はリスを育て、リスは森を増やす。
その循環が、森を“生きた記憶”にしている。

リスは、森の記憶を形にする動物。