🐓ニワトリ8：土佐ジロー ― 小型で鋭い原風景 ―

― 小柄な体で、すばしこく草地を抜けていく土佐ジロー。軽やかな羽音と鋭い眼差しには、山と里の境目を生きてきた“原風景の鳥”の気配が宿っている。コンパクトな体格の中に、野性味と家庭鶏らしさが静かに同居している ―

土佐ジローは、小型で動きの俊敏な在来系統をもつ地鶏だ。高知の山間部で育まれ、卵の黄身の濃さと味わいの良さで知られる。小柄ながら野性味があり、環境に合わせて動く軽やかさが大きな特徴だ。

🐓目次

土佐ジローは、日本の地鶏の中でも小型だ。体が軽く、脚が強く、草地や段々畑のような起伏のある土地でもスムーズに動ける。体の輪郭は引き締まり、野の鳥らしい敏捷さが残っている。

土地の風景を映したようなコンパクトさと強さがある。

土佐ジローの卵は、小ぶりながら黄身が濃く、味が深い。放し飼いに近い環境で育つことが多く、餌の種類や運動量によって卵の風味が引き出されやすい。

小さなサイズに旨味が凝縮されているのが、この品種ならではだ。

敏捷な動きに加え、やや慎重で観察深い気質をもつ。周囲の気配をよく読み、草陰や小道を上手に使う。人との距離を保ちながらも、環境の変化に強く、飼育しやすい一面もある。

その動きには、山の暮らしと共にあった鳥の記憶が見える。

土佐ジローは、高知で古くから飼われてきた系統を元に作出された比較的新しい地鶏だ。地域の家庭鶏文化の中で長く生きてきた在来系統を組み合わせ、土地に合う丈夫な品種として育成された。

“土地の鶏”として守り、育てられてきた系統の延長線に土佐ジローがいる。

軽やかな影が、山の風を切りながら進んでいく。