川沿い、下水、港、湿った地面。ドブネズミは、乾いた室内よりも、水と匂いの集まる場所に現れる。体は大きく、動きは重い。それでも確かに、この都市に適したネズミだ。
ドブネズミは、ハツカネズミとは別の方向で人間環境に適応してきた。軽さや隙間ではなく、体格と泳ぐ力、そして雑食性の強さによって、都市の下層を支配する。人の目に触れにくい場所で、もっとも存在感のあるネズミである。
◆ 基礎情報
- 分類:哺乳綱/齧歯目/ネズミ科
- 和名:ドブネズミ
- 英名:Brown rat / Norway rat
- 学名:Rattus norvegicus
- 分布:世界各地(人為的拡散を含む)
- 主な環境:下水/河川沿い/港湾/都市部
- 体長:約20〜27cm(尾を除く)
- 体重:約200〜500g(個体差大)
- 食性:強い雑食性(動物質も多く利用)
- 活動:夜行性
- 繁殖:妊娠約21〜23日/一産6〜12匹前後
- 寿命:野生で1〜2年程度
- 天敵:猛禽類/イタチ類/ネコなど
- 特徴:体が大きく、泳ぎが得意で水辺に強い
🎐目次
🌿 1. ドブネズミとは ― 重さを選んだネズミ
ドブネズミは、ネズミの中では大型に属する。細い隙間に入り込むより、地面を走り、穴を掘り、水を渡ることを選んだネズミだ。
- 行動:地上性・地下性が中心。
- 移動:地面や配管沿いを使う。
- 巣:地面や堤防、建物基礎の隙間。
軽さよりも安定。逃げるよりも耐える。この方向性が、都市の下層環境に適していた。
🦴 2. 体と力 ― 大きさが生む安定
ドブネズミの体は太く、筋肉量が多い。咬む力も強く、硬い物もかじり取れる。
- 顎:硬い物を破壊できる。
- 四肢:掘削と泳ぎに向く。
- 尾:水中でのバランスに寄与。
この体は、細い通路よりも広い地下空間や水辺で真価を発揮する。ドブネズミは「濡れること」を恐れない。
💧 3. 暮らす環境 ― 水辺と地下の生活
ドブネズミは、水と共にあるネズミだ。泳ぎが得意で、下水管や河川を移動経路として使う。
- 下水:餌と移動路が揃う。
- 港湾:人為的資源が集中。
- 河川:巣穴を掘れる土壌。
乾いた屋内より、湿った環境の方が落ち着く。ドブネズミは都市の「水の流れ」に沿って生きている。
🔎 4. 人との関係 ― 都市と衛生の問題
ドブネズミは、都市衛生と強く結びつく存在だ。病原体の媒介やインフラ被害の原因として、警戒されてきた。
- 問題:感染症リスク、下水被害。
- 管理:都市計画と清掃体制に依存。
- 現実:完全排除は難しい。
ドブネズミの数は、都市の管理状態を映す指標でもある。彼らが増えるとき、環境の歪みもまた表に出てくる。
🌙 詩的一行
水の流れに沿って残る足跡は、都市の底のかたちをなぞっている。
🎐→ 次の記事へ(ネズミ7:クマネズミ)
🎐→ ネズミシリーズ一覧へ
コメント