🐈ネコ7:ツシマヤマネコ ― 島に残る小さな姿 ―

  • 分類:ネコ科(Felidae)
  • 和名:ツシマヤマネコ
  • 学名:Prionailurus bengalensis euptilurus
  • 分布:日本(対馬)
  • 体長:45〜60 cm
  • 体重:3〜5 kg
  • 食性:ネズミ類、鳥類、カエル、昆虫
  • 生息環境:森林、里山、農地周辺、河川付近
  • 保全状況:環境省 絶滅危惧ⅠA類

対馬の山あいを歩くと、湿った落ち葉の上に小さな足跡が残っていることがある。 音もなく移動し、草むらの影にまぎれ、すぐに姿を消す。 その静けさは、同じベンガルヤマネコの仲間であっても、島という環境で育まれた独特の気配を持っている。

ツシマヤマネコは、日本における唯一の野生ネコ科動物だ。 対馬という島に閉じた分布を持ち、外界と隔てられた環境の中で、固有の生態を保ちながら生きてきた。

🐈目次

🌍 1. 外見と体つき ― 太い尾と丸みのある体型

ツシマヤマネコは、家猫よりやや小柄で、全体に丸みを帯びた印象を持つ。 尾は太く、はっきりとした輪状の模様が入り、顔つきは短めのマズルを持つ。

  • 尾:太く短めで、黒い輪模様が特徴的
  • 体型:筋肉質で、短い脚が安定した動きを支える
  • 毛色:茶褐色の地に黒い斑や縞が入り、森の影に紛れやすい
  • 眼:夜行性に適した大きな眼で、薄暗い環境でも動きを読む

体のつくりは、島の森林での生活に適応した“低姿勢の俊敏さ”を感じさせる。

🌿 2. 生息環境 ― 島の森が育てた行動圏

対馬は山が多く、谷と林道が入り組む島だ。 ツシマヤマネコは、この地形を巧みに利用しながら生息域を広げてきた。

  • 森林:主な生活場所で、見通しの悪い場所に潜むことが多い
  • 里山:人里近くの林や休耕地にも姿を見せる
  • 河川周辺:水辺には両生類や小動物が集まり、採食に適している
  • 行動圏:個体によって変わるが、数km²の範囲で移動することが多い

“森林・草地・農地”という多様な環境が混ざり合う島だからこそ、 ツシマヤマネコはさまざまな場所をつなぐように歩く。

🎯 3. 食性と狩り ― 多様な獲物を捕らえる島の捕食者

ツシマヤマネコは、対馬という島を生きるため、環境に応じた柔軟な食性を持っている。

  • 主な獲物:ネズミ類(ヒメネズミ・ドブネズミなど)
  • 水辺の獲物:カエル、魚、小型の水辺動物
  • 鳥類:地上性の小鳥を狙うこともある
  • 昆虫:季節によっては重要な栄養源

狩りの方法は家猫と同じく、 待ち伏せ→静かに接近→一瞬の飛びかかりという合理的な流れ。 島という限られた環境の中で、できるだけ幅広い餌を利用して生きている。

🛡 4. 行動・気質 ― 慎重さと柔軟さをあわせ持つ

ツシマヤマネコは、ヤマネコ類の中でもとくに警戒心が強い。 しかし、島の地形に合わせて行動パターンを柔軟に変える能力も持つ。

  • 単独行動:常に単独で行動し、互いに距離を保つ
  • 警戒の鋭さ:音・匂い・風向きに敏感で、危険回避を最優先
  • 夜行性:人の活動が少ない時間帯に動きが増える
  • 移動:森林・草地・河川を一筆書きのように巡回する

この慎重な気質が、島の中で生き残るための大きな鍵になっている。

🌙 詩的一行

山の影とともに歩く姿が、静かな道の奥へそっと続いていった。

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