ナマズの一生は、水底の時間に寄り添って進む。
流れの強さや水の濁り、季節の変化。そうした条件の中で、卵は守られ、稚魚は身を潜め、成魚へと育っていく。派手な回遊はないが、環境に合わせた確かな段階がある。
この章では、ナマズがどのように生まれ、どのように成長し、どの段階で水底の生活者になるのか――その生活史を時系列で見ていく。
🐟 目次
🥚 1. 産卵と卵 ― 静かな場所を選ぶ
多くのナマズは、水温が上がる初夏に産卵期を迎える。流れの緩やかな場所や、水草の多い浅瀬が選ばれることが多い。
- 時期:春〜初夏。
- 場所:浅瀬・水草帯・物陰。
- 卵:粘着性をもつ種が多い。
卵は流されにくく、外敵の少ない環境に留まる。水底に近い場所で産むことは、最初からナマズらしい選択だ。
🐣 2. 孵化と仔魚期 ― 流れから身を守る
孵化したばかりの仔魚は、まだ泳ぐ力が弱い。しばらくは底や水草に身を寄せ、動かずに過ごす。
- 初期:遊泳力が低い。
- 行動:隠れる。
- 栄養:卵黄を利用。
この段階では、動かないことが最大の防御となる。流れを避け、見つからない場所で成長を待つ。
🐟 3. 稚魚から若魚へ ― 底へ近づく生活
成長するにつれて、稚魚は徐々に自力で餌をとるようになる。小さな無脊椎動物や有機物が主な食料だ。
- 食性:小型動物・有機物。
- 位置:中層から底へ。
- 行動:夜間活動が増える。
この時期から、ナマズは水底に近い生活へと移行していく。
⏳ 4. 成魚への成長 ― 水底の定住者になる
若魚が成魚になる頃、行動範囲は落ち着き、特定の場所をねぐらとして使うようになる。
- 体:感覚器が発達。
- 行動:定住性が高まる。
- 寿命:数年〜十数年。
成魚のナマズは、底に留まりながら周囲の変化を感じ取る存在になる。派手な移動はなくても、確かな居場所を持つ。
🌙 詩的一行
生まれたときから、底は遠くなかった。
🐟→ 次の記事へ(ナマズ6:食性と捕食)
🐟→ 前の記事へ(ナマズ4:感覚と行動)
🐟→ ナマズシリーズ一覧へ
コメント