穂が開花を終えると、麦はゆっくりと実りへ向かい始める。
小さかった粒の内部で、デンプンが少しずつ蓄えられ、
風に揺れながらも静かに重さを増していく時期だ。
登熟は、光と温度と水がそろうことで進み、
その年の粒の充実を左右する重要な時間でもある。
🕊️ 目次
🌾 登熟とは ― 粒が太る生理のしくみ
登熟(とうじゅく)は、受粉が終わった粒にデンプンが蓄積され、
内部がしっかりと満ちていく過程を指す。
開花直後の粒はまだ透明に近い状態だが、
日ごとに白く濁り、しだいに硬さを帯びていく。
粒の充実度は、そのまま収量や品質に結びつくため、
この時期の環境条件はとても重要になる。
☀ 光と温度の影響 ― 実りを決める条件
登熟は、気温と日照時間によって大きく左右される。
適度な温度が続くとデンプンの蓄積がすすみ、
晴れた日が多い年は粒の充実がよくなる。
逆に、気温の急低下や長雨は登熟を妨げ、
粒が十分に太らず軽く仕上がることもある。
そのため農家では、この時期の天気をとくに気にかけている。
💧 水分と根の働き ― 乾燥に強い麦の戦略
麦は乾燥に強い作物だが、登熟期には一定の水分が必要になる。
根が深く広がるため、わずかな水分でも効率よく吸収し、
粒へと送ることができるのが麦の強みだ。
乾いた土地でも育つ性質は、古くから麦を人の暮らしに結びつけ、
多くの地域で主食として根づく理由にもなっている。
🌙 詩的一行
光を受けた粒が、静かに重さをまとい始めている。
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