発芽を終えた麦は、地表へ顔を出したあと、静かに次の段階へ進む。
一本の茎のまま伸びるのではなく、株の根元から新しい芽が生まれ、
すそ野を広げるように成長していく。
この分げつは、麦の収量を左右する重要なプロセスであり、
土地の状態や光、水分が大きく影響する繊細な時間でもある。
🕊️ 目次
🌱 分げつとは ― 新しい茎が生まれる現象
分げつは、麦が地表に出て間もなく始まる。
株元にある節(せつ)から小さな芽が横に伸び、
それぞれが一本の茎として成長していく。
この仕組みによって麦は、一本の茎ではなく、
複数の穂をつけるための「枝分かれした株」へと姿を変えていく。
☀ 光と温度 ― 分げつを促す条件
分げつは、光が多い時期ほど促進される。
日差しが十分に届く場所では芽数が増え、
逆に光の弱い環境では分げつが抑えられる傾向がある。
また、適度な温度と水分がそろうことで、芽の成長はより安定する。
寒さが続く年は分げつが遅れ、暖かく穏やかな年は順調に広がる。
🌾 収量との関係 ― 「何本伸びるか」が実りを決める
分げつで生まれた茎のすべてが穂になるわけではない。
環境や株の力によって自然に間引きが起き、
最終的に収量へつながる茎が残る。
つまり、分げつは「増える」だけの現象ではなく、
季節や土地を映しながら調整されていく、麦の知恵のような仕組みでもある。
🌙 詩的一行
地面にひらいた小さな芽が、季節の光をひとつずつ集めていく。
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