🐝 ミツバチ9:コバミツバチ ― 野の花の小さな伴侶

ミツバチシリーズ

【分類】ハチ目(膜翅目)ハナバチ科 ミツバチ亜科(ミツバチ属)
【和名(非公式)】コバミツバチ(学名:Apis florea)
【英名】Red dwarf honey bee(アジア小型ミツバチ)
【体長】働き蜂:約7〜10mm/女王蜂:10〜12mm(ミツバチ属で最小クラス)
【群勢】数百〜数千匹(小規模群)
【行動半径】数百m前後(近距離の花源を中心に採餌)
【寿命】働き蜂:約1か月
【分布】インド・ネパール・タイ・ベトナム・ミャンマー・ラオスなど東南アジア〜南アジア
【巣の特徴】枝の先などに一枚の“露巣(single comb)”を吊り下げる
【食性】野草・樹木の花蜜・花粉(季節の小花に適応)
【季節】現地では乾季に繁殖し、雨季前に群勢が増す
【性質】温和・小型・敏捷/攻撃性は極めて低い
【人との関わり】小規模受粉者として果樹園・家庭菜園を支える地域もある


― 南の森の枝先に、一枚の巣をそっと揺らす小さなミツバチ ―

コバミツバチは、アジアの低地に暮らすミツバチ属で最小の蜂だ。
巣は一本の枝に扇形の板を吊るすように作られ、そよ風の中でゆらめく。
赤茶色の小さな体で、野の花を渡り歩きながら季節の色を細やかに運ぶ受粉者でもある。


🐝目次


🌿 コバミツバチとは ― 南の小さなミツバチ

アジアの森や農地では、季節の花が咲くと、小さな赤茶色の蜂がふわりと現れる。
それがコバミツバチで、ミツバチ属の中でも特に小柄で軽く、花から花へ敏捷に移動する。

・体が小さいため、細く浅い花にも容易に入れる
・在来植物や野草の花に特に適応
・群を大きくせず、環境に合わせて柔軟に動く

控えめな姿だが、現地の花々に寄り添い続けてきた蜂である。


🏡 巣の暮らし ― 枝に吊るす“一枚巣”という独自性

コバミツバチの巣づくりは、他のミツバチ属とはまったく違う。
地面の隙間や樹洞ではなく、一本の枝先に一枚の巣をぶら下げる“露巣”が特徴だ。

・群勢は数百〜数千匹の小規模
・外敵を避けられる高い位置を好む
・環境が悪化すると巣を捨てて移動する柔軟性がある

風に揺れる巣は、南の森に独特の景観をつくる。


🌸 花との関係 ― 小花に適応した訪花行動

小柄な体は、細い花や浅い花に非常に適しており、 熱帯・亜熱帯の野草に特に強い。

・野草の細花に入りやすい
・在来植物の花構造に適応
・“細やかな受粉”が得意で、地域の作物にも貢献

季節が変わると、花の連なりに沿ってふわりと姿を見せる。


🧭 性質と季節 ― 温和で敏捷、風のように動く蜂

刺すことはほとんどなく、人のそばでも静かに採餌を続ける温和な性質を持つ。
また、他種よりも涼しい時間帯に動ける柔軟さがある。

・乾季〜雨季前に繁殖が盛ん
・季節の変化に合わせて巣を移動する ・群のピークは気候に強く依存

熱帯の季節を、もっとも軽やかに渡るミツバチである。


🔄 他ミツバチとの違い ― 小型・露巣・高い柔軟性

ニホンミツバチやセイヨウミツバチと比べると、際立った違いを持つ。

・体の小ささ:ミツバチ属最小クラス
・露巣:一本の枝に扇形の巣を吊るす
・温和さ:人間にほとんど敵意を示さない
・移動性の高さ:環境が悪くなると巣を捨てる柔軟さ

まさに「風の民」のような、軽やかなミツバチだ。


🍯 人との関係 ― 果樹園を支える“小さな受粉者”

東南アジアでは、コバミツバチが果樹園や野菜畑の受粉者として重要視される地域もある。

・マンゴーや野菜など小花作物の受粉に向く
・小群でも訪花が正確で効果が高い
・農薬に弱いため環境指標にもなる

控えめながら、現地の食文化を支える存在である。


🌙 詩的一行

枝先で揺れる小さな巣が、森の季節をそっと映し返す。


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