― 深海の弓形の瞳 ―
メバチマグロ(目鉢鮪) ― 暗い海をめぐる大型回遊魚。大きな瞳は深い海の光をとらえるために発達し、マグロ類の中でももっとも“深み”を象徴する存在です。
📘基本情報
- 分類: スズキ目 サバ科 マグロ属(Thunnus obesus)
- 英名: Bigeye Tuna
- 分布: 熱帯〜温帯の外洋域。太平洋・インド洋・大西洋に広く分布し、水深500m近くまで潜行。
- 体長: 最大2.5m
- 体重: 最大210kg前後
- 寿命: 約10〜12年
- 食性: サンマ・イカ・タチウオなどを捕食。深場で光を反射する獲物を追う。
- 生息環境: 表層〜深層を回遊。昼は深海(300〜500m)、夜は表層に上昇する日周移動を行う。
- 漁法: 延縄・巻網・パースセインなど。主に太平洋・インド洋で漁獲。
- 保全状況: IUCNレッドリスト:Vulnerable(危急)。深海性ゆえに資源回復に時間がかかる。
太陽の光が届かぬ深みに、ゆっくりと泳ぐ影がある。
それがメバチ――その名の通り「大きな目」を持つマグロだ。
冷たい層と温かい層を行き来し、光のわずかな変化で海を読む。
静かな闇の中で、生きるための光を探している。
🌱 姿 ― 弓形の瞳
メバチの目は大きく、深海のわずかな光を捉えるために発達している。
体はずんぐりとし、筋肉質。
胸びれが長く、滑らかな曲線を描いている。
深海でも水圧に耐える厚い筋肉と皮膚を持ち、
その姿は“闇を泳ぐ矢”のようだ。
🌿 行動 ― 深海と表層をつなぐ
昼は深海の冷たい層に潜り、夜は表層へ上がる。
これは水温と酸素濃度を利用した独特の行動パターン。
深海では心拍数を落とし、表層では速度を上げる。
光の量で深度を決めるその精密な感覚は、
まるで“光の時計”を内に持っているかのようだ。
🔥 生態と適応 ― 闇に耐える心臓
メバチは低温・低酸素の深海に適応している。
酸素効率の高い血液と、心臓を包む厚い筋肉。
冷たい層に長く留まっても体温を保つことができる。
それはマグロ類の中でも特異な進化の形。
深い海を泳ぐには、強さよりも“しなやかさ”が必要だった。
⚓ 人との関わり ― 海の静かな恵み
日本では刺身や寿司の赤身として広く食べられる。
脂が適度で、味は濃いが重くない。
深海で成長するため成魚は大ぶりで、
漁獲は主に延縄によって行われる。
水産資源として重要だが、乱獲と気候変動が影響を与えている。
🌙 詩的一行
深海の闇を割り、ひとすじの光が魚の目に宿る。
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