― 南洋をめぐる旅人 ―
📘基本情報
- 分類: スズキ目 サバ科 マグロ属(Thunnus maccoyii)
- 英名: Southern Bluefin Tuna
- 分布: 南半球の温帯〜亜寒帯海域。インド洋・南大西洋・南太平洋を回遊し、主に南緯30〜50度帯に生息。
- 体長: 最大2.4m
- 体重: 最大260kg前後
- 寿命: 約40年(成熟まで8年以上)
- 食性: サンマ・イカ・オキアミなどを捕食。主に中層域を遊泳。
- 生息環境: 外洋性の高度回遊魚。南半球の寒流と暖流の境界域に多い。
- 漁法: 延縄・定置網・蓄養など。オーストラリア・ニュージーランド・日本が主要漁業国。
- 保全状況: IUCNレッドリスト:Critically Endangered(絶滅危惧IA類)。国際委員会(CCSBT)で資源管理。
冷たい南の海に、静かに生きるマグロがいる。
ミナミマグロ――氷を溶かすように動き続ける旅人。
北のクロマグロが豪壮なら、南のそれは沈黙の力を持つ。
深く、遅く、しかし確実に世界を巡る魚だ。
🌱 姿 ― 南の冷光
体は厚みを帯び、背中は深い青黒色。
体表の光沢は弱く、どこか鈍い銀色を帯びている。
これは高緯度の光を吸収しにくくするための保護色。
尾びれは強靭で、長距離航行に適した硬さをもつ。
🌿 行動 ― 南の回遊路
インド洋南部から南太平洋を結ぶ広大な回遊を行い、
成熟した個体はオーストラリア南方沖で産卵する。
若魚はインド洋を東西に横断し、
水温の変化に合わせて移動する。
南半球の冷たい潮を読む力が、この魚の命綱だ。
🔥 食性と生態 ― 静かな捕食者
ミナミマグロは俊敏だが、狩りは静かだ。
小魚やイカを狙い、最短距離で仕留める。
行動範囲が広いため、エネルギー消費を抑える知恵が進化した。
水温4℃の海でも体温を保てる強靭な循環系を持つ。
⚓ 人との関わり ― 海の資源と責任
ミナミマグロは、世界で最も厳しく管理される魚のひとつ。
乱獲によって数が激減し、国際的な漁獲枠が定められている。
オーストラリアでは若魚を蓄養し、
日本では資源回復のための研究が続く。
その肉は深紅で濃厚、味わいは「海のワイン」とも呼ばれる。
人の食文化と科学の狭間に生きる、沈黙の王だ。
🌙 詩的一行
冷たい潮を越え、南の光をその身に閉じこめて。
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