🐟マグロ2:スピードと力

マグロシリーズ

― 回遊魚の身体構造 ―

海の中で、マグロほど「動く」という行為に特化した魚はいない。
その体は速度と持久を両立させるための精密な構造物。
水の抵抗を計算し尽くした形の中に、
生きるための力学と美しさが共存している。


🌾目次


🌱 筋肉 ― 赤と白のエンジン

マグロの体は、赤筋と白筋の二層構造になっている。
外側の赤筋は酸素を多く含み、持久的な運動に使われる。
内側の白筋は瞬発力を生み、獲物を追うときに働く。
この二つの筋肉が絶妙に入れ替わることで、
マグロは長距離回遊と高速ダッシュの両方をこなす。
まるで二つの心臓を持つかのように。


🌿 尾びれ ― 推進の刃

三日月形の尾びれは、マグロの象徴。
その硬さと薄さが、抵抗を最小限に抑え、
水を斬るようにして前へと押し出す。
尾柄(びこう)には強靭な筋肉が詰まり、
一振りごとに水を“蹴る”ように進む。
推進力はまさに翼の役割を果たしている。


🔥 心臓と血流 ― 熱を運ぶ循環系

マグロの心臓は大きく、鼓動は速い。
高い血圧と豊富な酸素が筋肉に送り込まれ、
長時間の泳ぎを支えている。
血管には“逆流熱交換”の構造があり、
暖かい血を中心部に戻して体温を保つ。
冷たい海でも体を止めずに動けるのは、
この精密な循環系のおかげだ。


🌊 骨格と皮膚 ― 力を伝える設計

マグロの背骨は柔軟性と弾性を両立している。
体のねじれを吸収しながらも、尾まで力を伝える。
皮膚の下には細かい筋節が連なり、
ひとつの動きが全身に波のように伝わる。
その運動の滑らかさこそが、
マグロを「止まらない魚」にしている。


🌙 詩的一行

水を押すたび、力は形になり、形は海になる。


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