🦆マガモ2:羽と光 ― 色が生まれるしくみ

マガモシリーズ

― 光の羽をまとう鳥 ―

朝日が差し込むと、マガモの頭が一瞬、宝石のように輝く。
緑、青、紫――見る角度によって色が変わるその羽は、
まるで水面の光をまとっているかのようだ。
それは単なる色素ではなく、光そのものを操る構造の芸術。
自然が創り出した「光のデザイン」が、ここに宿っている。


🌾目次


🌱 構造色 ― 色素ではない色

マガモの頭部の緑色は、絵の具のような色素ではない。
羽の表面にある微細な層構造が、光を干渉させることで生まれる。
これを「構造色」と呼ぶ。
同じ羽でも見る角度や光の強さで色が変化するのは、
光が層の内部で何度も反射を繰り返すためだ。
自然の中の物理が、羽の上に描かれた光の絵なのだ。


🌿 羽の仕組み ― 微細な光の迷宮

マガモの羽には、ケラチンと空気層が織りなすミクロ構造がある。
光がこの層を通ると、一部が反射し、一部が透過する。
反射した光と透過光が干渉し合うことで、見る人の角度によって色が変わる。
つまり、羽そのものが“プリズム”のような構造を持っているのだ。
それは進化の中で磨かれた、極めて繊細な「自然の光学設計」である。


🔥 性差と季節 ― なぜオスだけが光るのか

マガモの鮮やかな羽は、オス特有のものだ。
メスは地味な褐色で、巣を守る保護色をまとう。
一方オスの派手な羽は、繁殖期のアピールのため。
春の求愛が終わると、オスの羽は地味な「エクリプス羽」へと変わる。
それは、命をつなぐために季節ごとに装いを変える鳥の“衣替え”だ。


🌊 ヨシガモとの比較 ― 色を映す鏡の仲間

マガモの緑とよく似た輝きを持つのがヨシガモだ。
彼らの頭は緑から紫に変化し、羽には銀色の波模様が走る。
この模様も構造色による反射で、光の角度によって見え方が違う。
同じ「光をまとうカモ」でも、模様の微細さや層の厚みが異なるため、
ヨシガモはより繊細な光沢を放つ。
自然界は、同じ素材で異なる美を描き分ける名工だ。


🌙 詩的一行

光をまとう羽――それは風の中の虹のかけら。


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