都市のマガモとカモの共生｜公園の池に生きる野生の水鳥たち

― コンクリートの水面にも、生命は降り立つ ―

マガモは本来、広い湿地や湖を好む鳥だ。
しかし近年、彼らは都市の公園や人工池にも姿を見せるようになった。
人と自然が密接に交わるこの場所で、カモたちは新たな“野生のかたち”をつくっている。
それは、失われゆく自然のなかで続く、静かな共存の物語である。

🌾目次

東京・大阪・札幌など、大都市の公園やビオトープでもマガモは見られる。
人工池のコンクリート護岸、水道水の池――それでも彼らはそこに降り立つ。
夜のビルの灯りが反射する水面を泳ぐ姿は、もはや現代の風景の一部だ。

彼らは自然の消失に押し出されたのではなく、むしろ人のそばを新たな“越冬地”として選び始めている。都市の池は、風を遮り、餌が豊富で、天敵も少ない。それは「安全な野生」として機能し始めているのだ。

都市のマガモは人慣れしている。
池のほとりを散歩する人々に近づき、パンをねだる姿もしばしば見られる。
しかしこの“親しみ”は、同時に野生の感覚を失う危うさもはらむ。
餌付けによる栄養バランスの乱れ、過密化による病気の拡大――。
人との距離感が、彼らの健康と自由の鍵を握っている。

「見る」「知る」「近づかない」――この三つのバランスこそ、都市における共生の基本である。

都市の池にも季節のリズムがある。
冬に渡ってくるマガモたちは、春の終わりに北へ帰る。
入れ替わるようにカルガモやコガモが姿を見せることもある。
わずかな池にも“渡り”があり、彼らは風とともに都市をめぐる。

ビル群に囲まれた池の上で羽ばたくカモは、失われた自然の記憶を、静かに運び続けている。

人工照明や人為的な餌付けが増えることで、マガモの行動パターンも変わりつつある。
夜間活動が増え、繁殖時期が遅れる例も報告されている。
また、留鳥化（渡りをしなくなる）する個体も増加中。
これは「適応」であると同時に、「変質」でもある。

都市という環境が、新たな生態を生み出している。その変化をどう受け止めるかが、これからの課題だ。

都市でマガモを見ることは、自然との接点を取り戻す行為でもある。
だからこそ、「観察」と「干渉」を区別したい。
餌を与えるより、環境を整える。追いかけるより、静かに見守る。一人ひとりの姿勢が、都市の自然を支えている。

彼らがそこにいるという事実―― それだけで、都市は少しだけやさしくなれる。

ビルの影、水面の光、そこにも野生が息づく。

🦆マガモ18：都市の池と野生 ― 共に生きる鳥たち｜変わる街と残る羽音