🦆マガモ11:トモエガモ ― 巴模様の幻のカモ|希少種の生態と観察記録

マガモシリーズ

― 冬の池に舞う、巴の光 ―

群れの中に、ひときわ鮮やかな模様を持つカモがいる。
顔に浮かぶ巴(ともえ)のような模様――それが「トモエガモ」。
日本では冬鳥として渡来するが、その数は少なく、年によってはほとんど見られない。
その希少性と美しさから「幻のカモ」とも呼ばれる。
ここでは、トモエガモの特徴・見分け方・生態・観察ポイントを詳しく紹介する。


🌾目次


🌱 基礎情報 ― トモエガモという鳥

分類: カモ科マガモ属(Mareca falcata)
全長: 約41cm 翼開長: 約70cm
分布: ロシア東部・中国北東部で繁殖し、日本には冬鳥として渡来。
特徴: オスは顔に黒・白・茶の巴模様、メスは全体が褐色。
食性: 水草・種子・藻類・小型甲殻類など。
繁殖: 北方の湿地や湖で夏に繁殖。
鳴き声: 「ピィ」「ピュッ」など短く澄んだ声。
識別ポイント: オスの顔の巴模様、白い胸、丸い体形。

トモエガモは日本で見られるカモの中でも数が少なく、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧種(NT)に指定されている。
その優美な姿から古来より絵画や文様にも登場し、「文様のモデル」としても知られる。


🌿 特徴と識別ポイント ― 顔の巴模様

オスの顔には黒・白・茶の3色が組み合わさった巴模様があり、他のカモにはない独特のデザイン。
体は白い胸、灰色の翼、黄褐色の腹。背中には緑がかった光沢がある。
メスは全体に褐色で目の周りに淡いアイリングが見られる。
体形はコガモよりやや大きく、丸みを帯びている。

✅ 見分けポイント:
・オスの顔にくっきりとした巴模様。
・白い胸と黄褐色の腹。
・小柄で丸い体。
・翼鏡は緑色の金属光沢。


🔥 生態と行動 ― 群れで過ごす小さなカモ

トモエガモは潜水せず、水面で植物の種や藻を食べる「水面採餌ガモ」。
主に朝夕に活動し、日中は岸辺で休息する。
性格は穏やかで、マガモやヒドリガモ、コガモなどと混群を作ることが多い。
繁殖期になるとオスは顔の模様がより鮮明になり、ディスプレイで羽を広げてアピールする。


💧 渡りと分布 ― 希少な冬の旅人

ロシア極東から中国東北部で繁殖し、冬に日本・韓国・中国南部へ渡る。
日本では主に本州・九州の湖や湿地で観察されるが、年によって渡来数が大きく変わる。
特に近年は数が減少傾向にあり、“出会えたら幸運”といわれる存在になっている。
観察記録が多いのは石川県の片野鴨池、滋賀県の琵琶湖、熊本県の江津湖など。


🌊 観察のコツと近年の動向

トモエガモは他のカモに混じっていることが多く、観察には根気が必要。
群れの中で「顔に白い模様がある小型カモ」を探すのがコツ。
風のない日や朝夕の光の時間帯は、顔の模様がはっきり見える。
また、個体数が少ないため観察情報の共有が重要。SNSやバードウォッチング報告で出現情報をチェックすると良い。

日本では保護区での観察が中心だが、自然環境の変化とともに渡来地の分布が年々変化している。
「幻のカモ」と呼ばれるその姿に出会える瞬間は、まさに冬の贈り物だ。


🌙 詩的一行

巴模様、風に消えても目に残る幻。


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