コウモリは、嫌われやすい動物だ。
姿をよく見せず、夜に現れ、音もなく飛ぶ。
そこに、暗闇や病気、死といった人間の不安が重なり、
コウモリは長いあいだ、恐怖の象徴として語られてきた。
だが、その多くは生態とは直接関係のないイメージである。
この章では、コウモリがどのように誤解され、なぜ恐れられてきたのかを整理していく。
🦇 目次
🌙 1. なぜコウモリは怖いのか ― 夜と見えなさ
人間は、見えないものを恐れる。
夜に活動し、輪郭をはっきり見せないコウモリは、その条件をすべて満たしている。
- 活動時間:主に夜
- 飛行:音が小さく不規則
- 姿:逆さにぶら下がる
さらに、顔の造形も人間に近くない。
大きな耳、尖った鼻、鋭く見える歯。
これらは実用的な形状だが、感情的には「異質」に映る。
コウモリが怖いのではない。
夜と不可視性が、人間の想像力を刺激してきたのである。
🧛 2. 吸血のイメージ ― ごく一部の例外
「コウモリ=血を吸う」という印象は、非常に強い。
だが実際に血を食べるコウモリは、世界に3種しかいない。
- 分類:吸血コウモリ(中南米)
- 割合:全体のごく一部
- 対象:主に家畜
しかも吸血は、大量の血を奪う行為ではない。
皮膚を浅く切り、少量をなめ取る程度だ。
多くのコウモリは昆虫、果実、花蜜を食べている。
吸血は、コウモリ全体を代表する特徴ではなく、例外的な食性にすぎない。
🦠 3. 病気との関係 ― 事実と誇張の境界
近年、コウモリは感染症との関係で注目されることが多い。
確かに、ウイルスの宿主となる例は報告されている。
- 事実:一部のウイルスを保有
- 誇張:直接的な感染源と決めつける
- 重要:人為的接触が問題
多くの場合、感染は野生動物との過剰な接触や、環境破壊によって引き起こされる。
コウモリ自体が「危険」なのではなく、距離の取り方が崩れた結果だ。
自然の中で適切な距離を保っていれば、
コウモリは人間にとって静かな隣人であり続ける。
📺 4. 物語とメディアが作った像
吸血鬼、怪物、闇の象徴。
コウモリは、物語の中で何度も恐怖の記号として使われてきた。
映像作品や小説は、そのイメージを強化し、
実際の生態とは切り離された「役割」を与えてきた。
それらは文化としては興味深いが、
現実のコウモリを理解する手がかりにはならない。
このシリーズでは、物語の影をいったん脇に置き、
実際に何をして生きている動物なのかに目を向けていく。
🌙 詩的一行
コウモリが怖いのではなく、知らないままでいることが怖かった。
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