― 見えない場所で森は話している ―
地表の下に、もうひとつの森がある。
そこでは光の代わりに、糖が流れ、信号が渡る。
木と菌が結ばれるその場所で、森は静かに会話している。
🌿 共生の根
コナラの根の先には、無数の糸のような菌がつながっている。
それは「菌根」と呼ばれる共生の形。
木は光で作った糖を菌に渡し、菌は土の中の水やミネラルを木に渡す。
互いの足りないものを補い合う、森の経済だ。
菌の糸は細く、岩のすき間にも入り込み、
一本の木では届かない栄養を運んでくる。
根と菌は、境界を持たないひとつの体のように働く。
🌾 森をつなぐ網
菌の糸は、木と木をもつないでいる。
若い木と老木、同じ種と違う種。
糖や情報が菌糸を通ってやり取りされ、
光の届かない場所でも生きる力が広がっていく。
嵐で倒れた木の根から、
まだ生きている菌糸が他の木へとつながり、
栄養を渡すこともある。
それはまるで森全体がひとつの生きものであるかのようだ。
🍂 命のインターネット
研究者はこれを「ウッドワイドウェブ」と呼ぶ。
木々が菌を通じて情報を伝える、
森の“インターネット”のような仕組み。
危険を知らせ、枯れ葉の栄養を共有し、
新しい芽の生長を助ける。
私たちが森を歩くとき、
足の下では無数の糸が結び合い、
そのつながりの上に、木々の時間が流れている。
🌙 詩的一行
見えない糸が、森をひとつにしている。
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