🌳コナラ5:樹皮と年輪

コナラシリーズ

― 木が記憶する時間 ―

木はしゃべらない。
けれど、その皮と年輪には、すべての季節が書き込まれている。
森の中で最も静かな語り手は、いつも幹の奥にいる。


🌳 樹皮 ― 森の皮膚

コナラの幹を手で触れると、ざらついた感触がある。
灰褐色の樹皮には縦の筋が走り、古い部分は剥がれ落ちる。
それは、木が時間を脱ぎ捨てるような行為だ。

樹皮は木を守る鎧であり、同時に森の記録帳でもある。
日照、乾燥、虫食い――すべての出来事が表面に刻まれている。
その裂け目に苔や地衣類が生え、さらに虫や小さな蜘蛛が暮らす。
木の表面には、もうひとつの小さな森が重なっている。


🪵 年輪 ― 見えない日記

伐られたコナラの切り株には、幾重もの輪が広がる。
その一本一本が、ひとつの季節を意味する。
厚い年輪は豊かな年、細い年輪は厳しい年。
日照や降水、土の栄養――すべてが輪の幅に反映される。

年輪はただの時間の印ではない。
同じ場所で生きた他の木々と、環境の記憶を共有している。
隣の木の年輪と照らし合わせれば、
森全体の過去の気候を読み取ることができる。
つまり、木は森の中で最も正確な“記録者”だ。


🍂 森の記憶としての木

古いコナラ林には、年輪が百を超える個体もある。
彼らの幹には、人の生活と森の変化が層になっている。
戦後の伐採、炭焼き、植林――すべての時代が木の中に残る。

森を切るという行為は、同時に記録を開くことでもある。
断面の模様を見れば、その土地の記憶が浮かび上がる。
木を伐るたびに、人は森の時間を覗き込んできた。


🌙 詩的一行

木の中で、時間は静かに呼吸を続けている。


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