― 森をめぐる時間 ―
森には、時計も暦もない。
それでも木々は、確かなリズムで季節を知っている。
光と風と水のめぐりの中で、コナラの一年は静かに回っていく。
🌸 春 ― 芽吹きの季節
冬の眠りから目覚めた森に、光が射す。
枝の先で小さな芽が開き、
まだ冷たい風にふるえながら、新しい葉が広がっていく。
地面では落葉がほどけ、
虫や菌が動き出し、土が柔らかくなる。
森の呼吸が再び始まる季節。
🌿 夏 ― 影の深さ
陽が高くなり、森は濃い緑に包まれる。
コナラの葉は厚くなり、光をさえぎって森の中を冷やす。
樹液が香り、虫たちが集まる。
風が通ると葉が波のように揺れ、
森全体がひとつの生き物のように動いている。
🍂 秋 ― 実りと落葉
枝に実ったドングリが熟し、
リスやカケスがそれを運ぶ。
葉は色づき、やがて音もなく落ちていく。
落葉は森を覆い、冬の支度を始める。
すべてが去っていくようでいて、
その下では新しい芽がもう待っている。
❄️ 冬 ― 静けさの底
雪が降り、森が眠る。
葉を落としたコナラの枝の間から、
淡い光が地面まで届く。
動くものが少ない冬は、
森が自分の呼吸を聞いている時間。
根と菌が静かに働き、
見えないところで次の春をつくっている。
🌙 詩的一行
季節は巡るたびに、森を少しずつ新しくする。
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