― 森をめぐる見えない流れ ―
風が吹くと、森は形を変える。
葉が裏返り、枝がしなり、幹がわずかに軋む。
その動きのひとつひとつが、森を呼吸させている。
🍃 森を渡る風
風は、森の外からやってくる。
山の稜線を越え、谷を抜け、
やがて木々の間に入りこんでいく。
コナラの森では、枝と葉が複雑に重なり、
風はまっすぐ進むことができない。
そのため、風は森の中で分かれ、
渦をつくりながら静かに広がる。
この渦こそが、森を冷やし、湿り気を運び、
虫や花粉を遠くまで運ぶ。
風は森の情報を運ぶ手でもある。
🌬️ 風がつくる音と影
風が強い日は、森全体が音になる。
葉が擦れ合い、枝が鳴り、
幹の中では微かな振動が響く。
その音は、森の安否を知らせる声でもある。
風が止まると、光が変わる。
木漏れ日が揺れず、空気が止まり、
森は時間を止めたように静まる。
風と光は常に対になって、森の表情をつくっている。
🌿 風が運ぶ命
春には花粉、夏には香り、秋には種を。
風は季節ごとに運ぶものを変える。
ドングリを運ぶのは鳥やリスだが、
花粉を遠くへ飛ばすのは風の仕事だ。
風が通る森は健康だ。
空気が入れ替わらない森では、
病気も虫もたまりやすくなる。
コナラの森は枝を広げ、
風の道を自らつくっている。
🌙 詩的一行
風の道こそ、森の記憶が通うところ。
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