🌳コナラ12:雨と水脈

コナラシリーズ

― 森をめぐる水の道 ―

雨が降るたび、森の奥で静かな音がする。
葉を伝い、幹をすべり、地面に染みこむ。
そのすべてが、森の体をめぐる水の旅だ。


🌧️ 雨を受ける森

コナラの森では、雨がまっすぐ地面に落ちることは少ない。
葉が受け止め、枝が分け、無数の小さな滴に変える。
それが何度も弾かれながら流れ落ち、
最後に幹を伝って土へと入る。

雨は森の上から下までを洗い、
埃や花粉を落とし、菌や虫に水を与える。
森に降る雨は、ひとつの儀式のようだ。


💧 土の下の流れ

地面にしみこんだ水は、腐葉土と粘土の層を通り抜け、
やがて細い水脈をつくる。
コナラの根はそれを探りながら伸び、
乾いた時期には深く潜ってその水を掬う。

根のまわりには菌糸が張りめぐらされ、
水を蓄え、必要な場所へ送る。
森の下には、見えない血管のような水の網がある。


🌿 水と命の均衡

水が多すぎれば根は腐り、
少なすぎれば葉が枯れる。
コナラの森は、
雨と乾きのあいだで絶えず均衡を保っている。
夏の夕立、冬の霜、春の雪解け――
すべてが森の時間を動かしている。

森は雨をただ受けるのではなく、
その流れを調整しながら、
自分に必要な分だけを吸い上げている。


🌙 詩的一行

森の中では、雨さえも帰る場所を知っている。


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