🌳コナラ11:腐植の層 ― 命をほどく場所 ―

コナラシリーズ

― 死が、森を支えている ―

森の地面を踏むと、やわらかい。
それは、長い時間をかけて崩れた命の層。
葉が土に変わる場所に、森の心臓がある。


🍂 落ち葉のゆくえ

秋に降り積もったコナラの葉は、冬の間にゆっくり崩れていく。
風に揉まれ、霜に砕かれ、春の雨に溶ける。
そこへキノコの菌やミミズ、ダンゴムシが集まり、
葉をほどいて細かく砕き、再び土に還す。

落葉の上で命は終わらず、
別の命へと引き渡されていく。
死は森の入口なのだ。


🪱 分解の職人たち

地表には、見えないほど小さな生きものが無数にいる。
バクテリア、放線菌、腐生菌。
彼らが落ち葉をほどき、栄養を無機に戻す。
それを根が吸い上げ、また新しい木の体になる。

腐植の層は、命の記憶の重なり。
雨のたびに呼吸し、森の匂いをつくり出す。
私たちが「森のにおい」と呼ぶあの香りは、
死の変化そのものの香りでもある。


🌾 循環の呼吸

森は、終わりと始まりを同じ場所に置いている。
落ち葉の下には無数の根が伸び、
菌糸がそれを包み込み、
分解と吸収が同時に進む。

森は常に、ほどきながらつくっている
静かな呼吸の中で、命が形を変え続ける。


🌙 詩的一行

森は、死をほどきながら生きている。


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