― 静けさのなかのリズム ―
森は静かではない。
風が通り、葉が鳴り、虫が羽を震わせる。
けれどその音のすべてが、森の呼吸に溶けている。
🌲 木の鳴る音
風が吹くたび、枝がこすれ合い、
低い音が森の奥で響く。
その音は、木々の関係を確かめるような対話だ。
湿った朝には柔らかく、乾いた昼には硬く響く。
森の湿度そのものが、音のかたちを変えていく。
落ち葉を踏む音もまた、森の一部。
地面の層が音を吸い、遠くまで響かせない。
森の静けさは、音が消えているからではなく、
音がすべて吸収されているからだ。
🪶 虫の声
夏の夜、森を包むのは虫の合唱。
セミの抜け殻の下で、コオロギやカンタンが鳴く。
それぞれの声は孤立しているようでいて、
全体でひとつのリズムを刻んでいる。
気温が下がれば音も鈍り、
風が止まると途端に静まる。
森の音は気候の指標でもあり、
小さな生き物たちの体温そのものだ。
🌳 音を聞く森
音を出しているのは生き物だけではない。
木の幹の中では水が流れ、
その微かな振動が幹を通じて伝わっていく。
耳では聞こえないその響きが、
菌や虫たちにとっては世界のリズムかもしれない。
音は森の外に逃げず、森の中で循環している。
その閉じた響きが、森の時間を守っている。
🌙 詩的一行
森の静けさは、音が眠る場所。
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