🌳コナラ1:コナラという存在

コナラシリーズ

― 森をひらく最初の木 ―

冬の森で、最初に光を受け止める木がある。
落葉した枝のあいだから、春の光が差し込む。
森は静まりかえり、そしてそこから、また始まっていく。


🌱 姿 ― 森の入口に立つ

コナラは、明るい森をつくる木だ。
樹皮は灰褐色で、縦に浅く裂け、ところどころに苔がつく。
幹はまっすぐに伸び、太陽を探すように枝を広げる。
葉は卵形で、縁に細かい鋸歯があり、風を受けるとさざ波のように揺れる。

春、まだ冷たい風の中で芽がほころぶ。
若葉は透けるように薄く、陽光をやわらかく跳ね返す。
夏には虫の影がその上を歩き、秋にはドングリが重たげに枝先に下がる。
やがて一粒ずつ地面に落ち、リスや鳥がそれをくわえて森の奥へ運ぶ。
冬になればすべてを落とし、枝だけの姿で空に立つ。
その裸木こそが、森の静けさを抱えている。


🌿 生態 ― 光と土の循環

コナラの森は、人が伐って、また育てた二次林に多い。
定期的に伐採することで若木が生え、光が地表に届く。
そこに草や花が咲き、虫が戻り、鳥が巣をつくる。
この「繰り返しこそが森の呼吸」だといわれてきた。

地中では、根が菌と手を結んでいる。
菌は水と栄養を運び、木は光のエネルギーを分け与える。
互いの命が混じり合い、見えない森をつくっている。
雨が落ち、落ち葉が腐り、微生物がそれをほどき、
再びコナラの根がそれを吸い上げる。
森はゆっくりと、自分自身を育てているのだ。


🔥 関わり ― 炭と森の記憶

かつて日本の村々では、コナラの薪が冬を支えた。
炭焼き小屋の煙が山に漂い、炭は囲炉裏や鍛冶場をあたためた。
火持ちがよく、灰がやわらかく、畑の肥やしにもなった。
人は森を切りながら、同時に森を守っていた。

里山のコナラ林は、人と森が共に呼吸していた証。
炭焼きが途絶えたあとも、木々は芽を出し、
誰の手も加わらないまま、再び森に戻っていく。
それでも木々は、人がいた記憶を抱いたまま立ち続ける。
風が吹くたびに、枝がこすれ合い、
かつての暮らしの音が、遠くでかすかに響く。


🌙 詩的一行

光を受け継ぐために、葉を落とす。


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