触れただけで、森は焼ける。
森の斜面に、
赤い指のようなものが突き出している。
雨上がりの湿った土の中、
それは本当に、燃えているように見える。
カエンタケ。
その名のとおり、“火炎のきのこ”。
触れれば、皮膚がただれる。
わずか数グラムで、人ひとりを殺す。
だが、その姿は――
息を呑むほど、美しい。
🔥 生きるための炎
カエンタケは、
ナラやシイなどの広葉樹の根元に生える。
森の病に寄生し、
枯れた木を分解して生きる。
毒は防御であり、同時に孤独。
森の中で誰にも近づかれず、
それでも立ち続けるために、
自らを燃やすようにして存在している。
その赤は、怒りではない。
生の執念の色。
🩸 森の警告
森が穏やかに見えるときほど、
このきのこは現れる。
生と死の循環が滞り、
森がわずかに歪んだとき、
カエンタケはその傷口に咲く。
つまり、森が人に出す“赤信号”。
環境の変化を、
静かに、しかし確実に伝えている。
🌹 美と恐怖のあいだ
人は炎を恐れながらも、
そこに魅了されてきた。
カエンタケもまた、
その“禁断の美”を象徴している。
触れてはいけない。
それでも、見てしまう。
森が創り出した“絶対の美”は、
恐怖と同じ場所に咲く。
✨詩的一行
炎の形をした命。
森がまだ、生きているという証。

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