鳥の名前は、
その姿だけでなく、
人がどう見てきたかを映す。
カワセミには、
複数の呼び名がある。
それぞれが、少しずつ違う視点を含んでいる。
この章では、
日本語と英語におけるカワセミの名前を通して、
ことばがこの鳥をどう捉えてきたかを見ていく。
🟦 目次
🪶 1. 「カワセミ」という呼び名
「カワセミ」という名は、
川にいる鳥という直截な呼び方だ。
語源については諸説あるが、
「川にすむ鳥」を指す呼称として、
自然に定着したと考えられている。
この名前には、
色や象徴よりも、
生息場所への注目が強く表れている。
日本語の鳥名には、
姿や行動、場所をそのまま写すものが多い。
カワセミも、その系譜にある。
💎 2. 翡翠 ― 色を写した漢字
カワセミを表す漢字として、
最も知られているのが「翡翠」だ。
本来この字は、
宝石の翡翠を指す言葉であり、
鳥の名として使われるようになったのは、
羽色の連想による。
漢字表記の「翡翠」は、
意味を説明するための文字というより、
視覚的な印象を写した当て字に近い。
そのため、
日常語としては使われにくく、
文学的・装飾的な文脈で選ばれてきた。
🦋 3. 川蝉という表記
もうひとつの表記が「川蝉」だ。
蝉という字が使われているが、
実際にセミと関係があるわけではない。
これは、
中国語の表記や、
古い字書の影響を受けたものと考えられている。
音や生態を直接表すというより、
既存の字を組み合わせて作られた名称だ。
現在では、
川蝉という表記はあまり一般的ではなく、
学術・文語的な場面に限られる。
🌍 4. 英名 Kingfisher の意味
英語でカワセミは、
Kingfisher と呼ばれる。
直訳すれば、
「魚をとる王」だ。
この名前は、
色の美しさよりも、
狩りの巧みさに注目している。
英名には、
生態的な評価が前面に出ており、
場所や象徴性はあまり含まれていない。
同じ鳥でも、
言語によって、
焦点の当て方が異なることが分かる。
🪶 詩的一行
カワセミは、ことばの数だけ、別の姿で見られてきた。
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