🐌 カタツムリ2:分類と系統 ― 陸に上がった腹足類 ―

カタツムリシリーズ

湿った葉の裏で、殻がひとつ光る。
その小さな渦巻きは、ただの形ではない。
カタツムリは、貝の系譜が陸に残した痕のひとつだ。

私たちはカタツムリを「遅い生き物」として見がちだが、
分類の目で見れば、それはむしろ進化の大きな移動の結果として現れている。

海の巻貝、淡水の貝、殻を捨てたナメクジ。
それらが一本の道の途中で分かれ、陸へ適応した枝が、
いま目の前のカタツムリにつながっている。

🐌 目次

🧬 1. どこに属するのか ― 軟体動物・腹足類という骨格

カタツムリは、貝類を含む大きなグループ「軟体動物門」に属し、
その中でも腹足類(Gastropoda)と呼ばれる系統に入る。

  • 門:軟体動物門(Mollusca)
  • 綱:腹足綱(Gastropoda)
  • 特徴:腹側の「足」で移動し、内臓や殻がねじれる発生過程をもつ(ねじれ=torsion)

腹足類には、海の巻貝も、淡水の貝も、陸のカタツムリも含まれる。
つまりカタツムリは「陸の生き物」ではあるが、分類の中心はあくまで貝の側にある。

🌍 2. 陸生化した系統 ― 「肺」を獲得した貝たち

陸に上がるために必要だったのは、まず呼吸の更新だ。
多くの陸生カタツムリは、外套腔(殻の内側の空間)を肺のように使うことで空気呼吸を成立させた。

  • 呼吸:外套腔を肺状に利用(いわゆる「肺呼吸」)
  • 体表:乾燥に弱く、水分保持が生存の前提
  • 行動:夜・雨・日陰に偏る(乾燥回避)

ここで重要なのは、陸生化は「陸で平気になる」ことではなく、
乾燥の危険とセットで成立した適応だという点だ。

だからカタツムリは、肺を得てもなお、湿り気から自由になれない。
「陸の貝」という言い方が残るのは、その依存が体の設計に深く組み込まれているからだ。

🌀 3. 系統の見え方は変わる ― 形からDNAへ

分類は昔から行われてきたが、近年は分子系統(DNA)によって、
「似ているから近い」とは限らないことが次々に明らかになっている。

  • 従来:殻の形・大きさ・模様・生殖器などの形態で整理
  • 近年:DNA解析で系統関係を再点検
  • 注意点:分類群の呼び方や区分は研究の進展で更新される

このシリーズでは、読者が混乱しないことを優先して、
まずは確実な骨格――軟体動物 → 腹足類 → 陸生のカタツムリ――を土台として扱う。

細かな系統名(どの上科・科に置くか)は、地域や研究で揺れが出やすい。
だからこそ、分類は「暗記」ではなく、見方の道具として持つのがいちばん役に立つ。

🧭 4. カタツムリを見分けるための分類視点

現場で役に立つのは、「どの名前か」よりも「どこを見れば違いが出るか」だ。
カタツムリの仲間を整理するとき、まず効く観点は次の通り。

  • 殻:巻きの向き・高さ・口の形(殻口)
  • 体:触角の形(目がある位置)・体色・粘液の性質
  • 暮らし:森林性か、草地か、人家周辺か(環境の癖)
  • 活動:雨の日だけ出るのか、夜に強いのか

そして、ここから先の話――
殻を捨てたナメクジとの関係、外来種の問題、種ごとの違い――が、
この分類の土台の上に積み上がっていく。

🌙 詩的一行

カタツムリの殻は、陸へ渡った系譜が、まだ水を忘れていない証拠だ。

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