🐦カラス17：森と街の境界で

― 適応する知恵 ―

朝の通勤路、ビルの谷間を風が抜ける。
その空を、黒い影がすべる。
カラス――彼らはもう、森の鳥ではない。
街のリズムを読み、電線を枝に変え、アスファルトの上に新しい“森”を見いだした。

🌾目次

もともとカラスは、森に棲む雑食の鳥だった。
人が森を離れ、街を築いたとき、彼らはその変化を観察した。
光るもの、食べ物、音――新しい世界の“ルール”を学び、やがて都市の一部となった。
その適応の速さは、人よりも自然に近い。

ゴミ捨て場は彼らにとって「食卓」であり、電線は「枝」、公園は「森」。
人が作った空間を、生き物として再構築する力。
カラスは都市を単なる棲み処ではなく、 “環境としての自然”として捉えている。
それは、破壊ではなく進化だ。

彼らを「害鳥」と呼ぶ声は今も多い。
だがその賢さと観察力は、都市の生態系の一部として機能している。
死骸を食べ、ゴミを分解し、街に“循環”を取り戻す小さな存在。
人が彼らを見直すとき、それは街がもう一度“自然”を取り戻すときかもしれない。

街の光にも、森の記憶が息づいている。