🐦カラス13：賢さと嫌われ者

― 人間社会とのすれ違い ―

朝の街を歩けば、電線の上で黒い影が鳴く。
彼らは人の目を見て、動きを読み、食べ物のありかを知っている。
それでも、人はカラスを「ずる賢い」と呼ぶ。
賢さを誇るほどに、嫌われていくという矛盾の中で、彼らは生きている。

🌾目次

カラスの知恵は、単なる“学習”を超えている。
彼らは人の顔を覚え、信号を理解し、工具を使う。
それは動物行動学の実験が証明する科学的事実であり、
同時に“環境と共に考える力”の現れでもある。
彼らにとって知恵とは、生き抜くための呼吸のようなものだ。

都市で暮らすカラスは、人の生活圏に深く入り込んでいる。
ゴミを漁る姿は嫌われるが、それは飢えを凌ぐための工夫。
彼らは“人間という環境”に適応しただけなのに、
人はそこに「悪意」を見てしまう。
カラスが賢ければ賢いほど、私たちは不安になるのかもしれない。

カラスは「人に最も似た鳥」と言われる。
社会をつくり、協力し、感情を持ち、記憶し、学ぶ。
それでも、理解されることはない。
彼らの黒は、知性と孤独をまとう色。
私たちが嫌うのは、カラスの姿の中に、
自分の心の影を見るからなのかもしれない。

黒い羽は、光の届かぬ知恵を包んでいる。