🦀蟹27:子が流される海

カニ(海)シリーズ

― カニの子どもは、親の近くにはとどまらない。生まれた瞬間から海の流れに乗り、目には見えない“遠い旅”へ出ていく。流されることは弱さではなく、生き物として組み込まれたしくみだ ―

カニの幼生は、ゾエアと呼ばれる小さな姿で海に放たれる。自力で遠くへ泳ぐ力はほとんどなく、海流に運ばれることで成長に必要な場所へ移動していく。ここでは、幼生が“流される海”でどのように生きているのかを整理する。

🦀目次

1. ゾエア幼生とは ― カニの最初の姿

カニの子どもは、成体とはまったく違う姿で生まれる。

  • 体は透明〜半透明で、細長い形
  • 背中に棘(とげ)を持ち、浮きやすい形状
  • 脚はまだ成体のようには使えない
  • 自力での長距離移動は困難

この“ゾエア幼生”の姿は、海流に乗るための形ともいえる。

2. 海流に運ばれるしくみ ― “流される”のではなく“預ける”

幼生は強い泳力を持たないため、海の流れに乗って移動する。

  • 海流に預ける:沿岸流に運ばれながら成長する
  • プランクトン生活:浮力が高く、表層〜中層を漂う
  • 分散効果:天敵や環境変化のリスクを分散できる
  • 温度・餌の豊富な海域へ自然に運ばれる:成長に最適な場所へ届く

“流される”こと自体が、生存のための戦略になっている。

3. 餌と成長のための移動

幼生期のカニは、漂いながら餌を食べて成長する。

  • 動物プランクトンをつまんで食べる
  • 日中は深場、夜は表層へ上がる「日周鉛直移動」を行う種も
  • 水温が適した場所へ自然に運ばれる
  • 成長に必要な環境が整っている海域に集まりやすい

海流は“餌の豊富な場所へ連れて行く働き”も持っている。

4. メガロパ幼生と“岸へ戻る”タイミング

ゾエアが成長すると、よりカニに近い「メガロパ幼生」になる。

  • 脚が発達し、泳ぎと歩行ができるようになる
  • 岩礁・砂地へ戻るタイミングを潮と匂いで感じ取る
  • 潮の流れが弱い日を選んで上陸・定着する例もある
  • この段階で“カニとしての生活”が始まる

流されてきた旅の終わりに、幼生は“戻るべき場所”を選ぶ。

🌙 詩的一行

揺れる水の道をすすむ小さな影が、海の奥でゆっくり形を変えていく。

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