🦀蟹25:月と潮の呼吸

カニ(海)シリーズ

― 海は月の引力に引かれ、静かにふくらみ、また沈んでいく。大潮と小潮、そのゆるやかな呼吸に合わせて、カニたちの一日は動き出す。潮が大きく動く日、ほとんど動かない日。その違いが、海辺の生き物に確かな合図を送っている ―

カニの生活は、月の満ち欠けによって変化する潮汐に深く影響される。潮の高さや流れの強さが餌の量、隠れ場所、活動の時間帯まで左右するためだ。ここでは、大潮・小潮の特徴と、それに合わせて変わるカニの行動を整理する。

🦀目次

1. 月がつくる大潮と小潮 ― 海の“呼吸”を知る

潮汐は、月と太陽の引力により海水が移動する現象だ。とくに月の位置が重要で、次のような違いが生まれる。

  • 大潮:満月・新月の頃。潮位差が大きく、干満がはっきりする
  • 中潮・小潮:潮位差が小さく、海の動きが穏やかになる
  • 潮流の強さ:大潮では流れが強く、小潮では落ち着く
  • 浅瀬の広がり方:干潮の幅が変わり、生き物の露出面積に影響

月の周期は約29.5日。カニの行動は、このゆるやかなリズムの中で変化する。

2. 大潮の日に起きること ― 流れ・餌・移動

大潮はカニにとって“動きやすい日”になることが多い。

  • 餌が流れに乗って集まりやすい:漂う小動物が増える
  • 干潮で広く露出する砂底:採餌の範囲が広がる
  • 流れが強く天敵が減る:魚の活動が制限される場面も
  • 移動のきっかけ:潮が大きく動く日は “次の場所” を探しやすい

大潮は“活発な一日”をつくることが多く、観察にも適した時間帯だ。

3. 小潮の日の静かな時間

小潮は、海と生き物の動きが落ち着きやすい日だ。

  • 潮位差が小さい:露出する砂地が短い
  • 流れが弱い:餌が多く流れてこない
  • 安心できる隠れ場所が増える:岩陰に留まる時間が増える
  • 移動が少なくなる:大潮ほどの“活動の合図”が生まれにくい

小潮は、カニたちにとって“静かに整える日”になる。

4. 種によって違う“潮の使い方”

カニの潮汐利用は種によって異なり、その生態をよく映す。

  • ワタリガニ類:大潮時に泳いで移動する例が多い
  • スナガニ類:干潮帯の広がりに合わせて採餌時間が変わる
  • イソガニ類:潮位が低いときに岩場を活発に動く
  • 深場のカニ:潮境の変化が“移動の合図”になる

潮の“呼吸”をどのように使うかは、そのカニの暮らし方そのものだ。

🌙 詩的一行

月のしずかな動きに合わせて、海の底の時間もゆっくりと歩き出す。

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