― 海は月の引力に引かれ、静かにふくらみ、また沈んでいく。大潮と小潮、そのゆるやかな呼吸に合わせて、カニたちの一日は動き出す。潮が大きく動く日、ほとんど動かない日。その違いが、海辺の生き物に確かな合図を送っている ―
カニの生活は、月の満ち欠けによって変化する潮汐に深く影響される。潮の高さや流れの強さが餌の量、隠れ場所、活動の時間帯まで左右するためだ。ここでは、大潮・小潮の特徴と、それに合わせて変わるカニの行動を整理する。
🦀目次
1. 月がつくる大潮と小潮 ― 海の“呼吸”を知る
潮汐は、月と太陽の引力により海水が移動する現象だ。とくに月の位置が重要で、次のような違いが生まれる。
- 大潮:満月・新月の頃。潮位差が大きく、干満がはっきりする
- 中潮・小潮:潮位差が小さく、海の動きが穏やかになる
- 潮流の強さ:大潮では流れが強く、小潮では落ち着く
- 浅瀬の広がり方:干潮の幅が変わり、生き物の露出面積に影響
月の周期は約29.5日。カニの行動は、このゆるやかなリズムの中で変化する。
2. 大潮の日に起きること ― 流れ・餌・移動
大潮はカニにとって“動きやすい日”になることが多い。
- 餌が流れに乗って集まりやすい:漂う小動物が増える
- 干潮で広く露出する砂底:採餌の範囲が広がる
- 流れが強く天敵が減る:魚の活動が制限される場面も
- 移動のきっかけ:潮が大きく動く日は “次の場所” を探しやすい
大潮は“活発な一日”をつくることが多く、観察にも適した時間帯だ。
3. 小潮の日の静かな時間
小潮は、海と生き物の動きが落ち着きやすい日だ。
- 潮位差が小さい:露出する砂地が短い
- 流れが弱い:餌が多く流れてこない
- 安心できる隠れ場所が増える:岩陰に留まる時間が増える
- 移動が少なくなる:大潮ほどの“活動の合図”が生まれにくい
小潮は、カニたちにとって“静かに整える日”になる。
4. 種によって違う“潮の使い方”
カニの潮汐利用は種によって異なり、その生態をよく映す。
- ワタリガニ類:大潮時に泳いで移動する例が多い
- スナガニ類:干潮帯の広がりに合わせて採餌時間が変わる
- イソガニ類:潮位が低いときに岩場を活発に動く
- 深場のカニ:潮境の変化が“移動の合図”になる
潮の“呼吸”をどのように使うかは、そのカニの暮らし方そのものだ。
🌙 詩的一行
月のしずかな動きに合わせて、海の底の時間もゆっくりと歩き出す。
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