🦀 カニ(淡水)4:サワガニ ― 清流に生きる小さな赤 ―

カニ(淡水)シリーズ

基礎情報

  • 分類:甲殻類・十脚目・短尾下目
  • 和名:サワガニ
  • 学名:Geothelphusa dehaani
  • 分布:日本(本州・四国・九州など)
  • 主な環境:沢・小川・湧水域、湿った林床の縁
  • 体サイズ:甲幅 数cm程度(地域差あり)
  • 食性:雑食(落ち葉・水生昆虫・小動物の死骸など)
  • 活動:主に夜行性。湿度が高い日に活発
  • 繁殖:淡水で繁殖(幼生が海へ出ない)
  • 見つけ方:夕方〜夜、石の下や落ち葉のたまりを静かに探す
  • 注意:生息地の撹乱に弱い。観察後は石を元に戻す

沢の流れが細く分かれる場所。石が重なり、落ち葉が溜まり、水と土の境がゆるくつながる。昼は動きがなく、夜になると気配が増える。サワガニは、そうした澄んだ水辺を選ぶようにして暮らしている。

サワガニの生活域は、はっきり区切れるものではない。速い流れの中でも、完全な陸上でもない。水際の湿った土、苔の付いた石の下、落ち葉の陰――それらが連続する場所に、居場所がつくられる。

清流は安定しているようで、実際には変化が多い。雨で水位が上がり、夏は温度が変わり、落ち葉が流れ込む。それでもサワガニは、その変化を避けず、条件として受け入れてきた。澄んだ水と隠れ場所があれば、暮らしは続く。

水辺で過ごし、必要に応じて水の外へ出る。前へ進むより、横へ位置をずらすようにして、石の下を替え、場所を移す。その動きは、清流という環境に合わせた、定住しすぎない生き方だ。

🦀目次

🌿 1. 清流とはどんな場所か ― 澄んだ水が条件になる ―

サワガニが暮らすのは、水が澄み、流れが極端でない場所だ。濁りが少なく、底の石が見え、急激な増減が起こりにくい。そうした条件がそろって、初めて居場所になる。

  • 水質:濁りが少なく、酸素量が保たれる。
  • 流れ:速すぎず、溜まりが点在する。
  • 温度:年間の変動が比較的小さい。
  • 継続性:短期間で環境が変わらない。

清流であること自体が、サワガニにとっての前提条件だ。

🪨 2. 石と落ち葉の構造 ― サワガニの居場所 ―

沢の中でも、サワガニが選ぶのは石や落ち葉が重なる場所だ。直線的な護岸や、均一な河床では姿を見せない。

  • 石:隙間ができ、身を隠せる。
  • 落ち葉:湿度を保ち、餌が集まる。
  • 影:直射日光を避けられる。
  • 連続性:移動先が点在する。

こうした構造が残る沢ほど、サワガニは定着しやすい。

🌙 3. 夜に動く理由 ― 静かな採食と移動 ―

サワガニの活動は、主に夜に集中する。昼は石の下で動かず、暗くなると水際に出て、ゆっくりと移動する。

  • 時間帯:日没後から夜半。
  • 行動:短距離を横に移動。
  • 採食:落ち葉や小さな生き物。
  • 回避:刺激があればすぐに隠れる。

目立たない動きが、清流での生存を支えている。

🏞️ 4. 環境の変化と弱さ ― 清流に依存するということ ―

サワガニは、環境の変化に強い生き物ではない。水路の改変や濁りの増加があると、姿を消しやすい。

  • 改変:護岸で隠れ場所が失われる。
  • 濁り:長く続くと定着できない。
  • 分断:移動経路が途切れる。
  • 反応:条件が崩れると消える。

サワガニが見られる沢は、清流の条件がまだ保たれている場所でもある。

🌙 詩的一行

石の下の赤は、澄んだ水が続いてきた時間を示している。

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