🦀 カニ(淡水)10:月に導かれる命 ― 繁殖と幼生の旅 ―

カニ(淡水)シリーズ

夜の水面に、月の光が落ちる。流れは変わらないように見えて、実際には少しだけ様子が違う。水位が動き、流速が変わり、岸の形がわずかに書き換えられる。淡水カニの繁殖は、そうした変化の中で始まる。

淡水に暮らすカニの多くは、月の周期と切り離して繁殖することができない。満ち欠けは、夜の明るさだけでなく、水の動きを通じて、体に届く合図になる。

🦀 目次

🌙 1. 月と繁殖 ― 合図としての周期 ―

淡水カニの繁殖期は、季節と月の周期に重なることが多い。満月や新月の前後は、水位が変わりやすく、夜間の行動もしやすい。

月は「指示」を出す存在ではない。ただ、周期的に変わる環境条件が、繁殖に適したタイミングを作り出す。淡水カニは、その変化を利用してきた。

🌊 2. 放たれる子 ― 流れに乗るという選択 ―

多くの淡水カニでは、孵化した幼生が水中に放たれる。親の体を離れた子は、自力で留まることができない。

流れに乗ることは、危険でもある。だが同時に、淀みや酸欠を避け、新しい環境へ運ばれる手段でもある。流されることが、唯一の移動方法になる。

🧬 3. 幼生の時間 ― 形が変わる旅 ―

幼生は、成体とはまったく異なる姿をしている。脚は長く、体は軽く、水中で浮きやすい形だ。

成長の過程で、何度も脱皮し、形を変える。そのあいだ、環境条件が合わなければ、次の段階へ進めない。幼生期は、最もふるいにかけられる時間でもある。

⚠️ 4. 成立条件 ― 失われやすい連続性 ―

繁殖が成立するためには、連続した環境が必要だ。水の流れ、適度な水位、幼生がたどり着ける場所。

堰や護岸によって流れが変わると、この連続性は簡単に失われる。成体が生きていても、次の世代が残らないことがある。

🌙 詩的一行

月に照らされた流れが、次の命を運んでいく。

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