― 水辺でよく見かける緑色の甲羅のカメ。その多くがアカミミガメである。もともと北米の川や湿地に暮らしていた種だが、ペットとして世界中に広まり、現在は多くの国で野生化した個体が在来種を圧迫している。強い食性、旺盛な繁殖力、環境変化への高い適応性――その特徴が、水辺の生態系に大きな影響を与えつつある。
この章では、アカミミガメの特徴・生態・在来種への影響・人との関わり方を整理し、外来種としての現在地を静かに見つめる。身近な水辺にいるからこそ、その背景を知ることが大切になる。
📘 基礎情報(アカミミガメ)
- 分類: カメ目 ヌマガメ科 アカミミガメ属
- 原産地: 北米(ミシシッピ川流域)
- 分布: 世界各地へ外来分布、日本では全国に定着
- 体長: 20〜30cm(メスが大型)
- 寿命: 飼育下で30年以上、野外でも長命
- 食性: 雑食(昆虫・植物・小魚・死骸)
- 繁殖: 年に数回産卵、1回に10〜30個
🐢目次
- 🟢 1. 特徴と見分け方 ― 赤い耳と強い噛む力
- 🌿 2. 生態 ― 雑食性・高い適応力・強い繁殖力
- ⚠️ 3. 日本の在来種への影響 ― 食害・競合・空間の独占
- 🤝 4. 人との関わり ― 飼育放棄・規制・共存の方向性
- 🌙 詩的一行
🟢 1. 特徴と見分け方 ― 赤い耳と強い噛む力
アカミミガメの名前は、目の後ろに伸びる赤い斑紋(耳のように見える部分)に由来する。日本の在来種とはいくつかの特徴で見分けられる。
- 赤い耳:もっとも分かりやすい特徴
- 甲羅の色:若い個体は緑〜黄緑、成体は暗緑〜黒
- 強い顎:貝や小さな甲殻類も噛み砕ける
- 大型化:メスは30cm近くまで成長する
甲羅や皮膚の模様には個体差が多く、野生化した群れでは色が濃くなる傾向がある。
🌿 2. 生態 ― 雑食性・高い適応力・強い繁殖力
アカミミガメが外来種として定着しやすい理由は、その雑食性・寒暖への耐性・繁殖力の高さにある。
- 雑食性:昆虫、藻類、水生植物、魚の卵、死骸まで幅広く食べる
- 高い適応力:都会の公園池から農業用水路まで生息可能
- 繁殖力:暖かい地域では年に複数回産卵
- 寿命の長さ:長命なため、一度増えると減りにくい
こうした性質は在来種と比べて圧倒的に優位で、環境の変化にも強い。
⚠️ 3. 日本の在来種への影響 ― 食害・競合・空間の独占
アカミミガメは日本の水辺で広く定着し、在来のクサガメやイシガメに大きな影響を与えている。
- 餌の競合:雑食性で大型のため優位に立ちやすい
- 日光浴場所の独占:浅瀬や倒木を独占し、在来種が追われる
- 植物食の影響:水生植物を大量に食べ、池の植生を変える
- 繁殖力差:在来種より産卵回数が多い
特に“バスキングスポット”(日光浴場所)の独占は、淡水ガメにとって致命的で、在来種の減少につながる。
🤝 4. 人との関わり ― 飼育放棄・規制・共存の方向性
アカミミガメはかつて大量に輸入され、安価で販売された歴史がある。しかし大型化・長寿・強い力から、飼育放棄が急増し、野外個体の拡大を招いた。
- 飼育放棄:大きくなり手に負えなくなるケースが多い
- 法律による規制:2023年に「条件付特定外来生物」に指定
- 飼えなくなるわけではない:登録制により“捨てられない仕組み”を強化
- 地域での駆除・捕獲:池や用水路で対策が進む
今後は、 「むやみに放さない」「飼い続ける仕組み」「地域での継続的管理」 が鍵となる。
🌙 詩的一行
静かな水面に浮かぶ甲羅の影は、遠くから運ばれた時間の跡をそっと映している。
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