― カメは古い地球の時代から生き残ってきたが、いま世界の多くの種が減少している。ゆっくり成長し、寿命が長いという特徴は、環境が安定している時代には強みだった。しかし、人間の活動によって環境が急激に変わった現代では、その“ゆっくりとした時間”が弱点になりつつある。
この章では、カメが直面する外来種・密猟・開発・気候変動という四つの危機と、それに対して行われている保全の取り組みを整理する。長い生活史をもつ生き物だからこそ、新しい時代への対応が求められている。
🐢目次
- 🚨 1. 外来種の問題 ― 食害・競合・交雑
- ⚠️ 2. 密猟・違法取引 ― ペット需要と伝統利用
- 🏗 3. 生息地の喪失 ― 開発・農地化・交通の影響
- 🌡 4. 気候変動 ― 水温・砂浜・性比の変化
- 🛟 5. 保全活動 ― モニタリング・保護区・市民参加
- 🌙 詩的一行
🚨 1. 外来種の問題 ― 食害・競合・交雑
世界の淡水ガメがもっとも大きな影響を受けているのが、外来種との競合だ。日本でも問題となっているアカミミガメのように、人為的に運ばれた種が在来種を圧迫する例は多い。
- 餌の奪い合い:雑食性で力の強い外来種が優位になりやすい
- 日光浴場所の独占:陸上スペースの争奪
- 交雑の懸念:遺伝的多様性の損失につながる
外来種問題は“餌”だけでなく、水辺の空間そのものをめぐる競争として進むのが特徴だ。
⚠️ 2. 密猟・違法取引 ― ペット需要と伝統利用
カメは世界的にペットとしての人気が高く、珍しい種や大型種は高額で取引される。そのため、密猟・違法輸出が絶えない。
- アジア圏で需要が高い:食用・薬用としての利用も残る
- リクガメの密輸:希少種が減少する大きな原因に
- 海ガメの甲羅:かつて装飾品に利用された歴史
現在は国際取引を規制するCITES(ワシントン条約)によって多くの種が保護されているが、密輸は今なお続いている。
🏗 3. 生息地の喪失 ― 開発・農地化・交通の影響
湿地の埋め立てや河川改修、ため池の減少など、淡水環境の変化は在来種に大きな影響を与える。
- 湿地・浅瀬の減少:採餌・越冬・産卵の場所が消える
- 農地化:除草剤や水管理の変化がカメを追い出す
- 道路横断の危険:移動途中の交通事故
海ガメの場合は、砂浜の消失・人工光が大きな問題となっている。夜の明かりはふ化直後の子ガメの進行方向を誤らせてしまう。
🌡 4. 気候変動 ― 水温・砂浜・性比の変化
カメは変温動物のため、気温や水温のわずかな変化が生態の中心に影響する。
- 性比の偏り:多くの種で卵の温度が性別を決める
- 海水温上昇:回遊ルートや餌場が変化
- 砂浜の浸食:産卵場所の喪失
とくに海ガメでは、砂浜の温度上昇がメスの比率を増やし、長期的な個体群のバランスに影響する可能性が指摘されている。
🛟 5. 保全活動 ― モニタリング・保護区・市民参加
カメの保全には、世界各地で多様な取り組みが行われている。
- 保護区の設置:産卵地・湿地の保護
- モニタリング:GPSタグ・カメラ罠で行動を追跡
- 外来種対策:駆除・捕獲・飼育放棄防止キャンペーン
- 地域参加:子ガメの放流会や保全学習
カメの生活史は長く、個体数の回復には時間がかかる。 そのため、保全活動は「長い時間軸」の中で続けられる必要がある。
🌙 詩的一行
静かな甲羅の奥で続くゆるやかな時間は、変わる世界のなかでもそっと息をつないでいる。
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