🐢カメ5:行動と生態 ― 食性・移動・越冬・繁殖のしくみ ―

カメシリーズ

― カメはゆっくりとした動きの印象が強いが、その暮らしは環境の変化に合わせて繊細に組み立てられている。水温・日光・餌・外敵――そのどれもを読み取りながら、淡水・海・陸の環境を静かに渡っていく。とくに食性と水辺の使い方は、種類ごとに大きく異なる。

この章では、食べる・動く・越冬する・繁殖するという4つの行動を軸に、カメの生態を立体的に見つめていく。遅い動きの裏側で、環境への鋭い適応が息づいている。

🐢目次

🍃 1. 食性 ― 淡水・海・陸で異なる「食べ方の戦略」

カメの食性は、暮らす環境によって大きく分かれる。

✔ 淡水ガメ

  • 雑食性が多い
  • 昆虫・ミミズ・甲殻類・小魚・落ち葉・藻類など
  • 季節や個体の成長段階で食べ物が変わる柔軟なタイプ

✔ 海ガメ

  • 種ごとに特化が進む
  • アオウミガメ:海藻中心の植物食
  • アカウミガメ:甲殻類・貝類を噛み砕く強い顎
  • タイマイ:サンゴ礁の海綿を食べる

✔ リクガメ

  • 基本は草食
  • 植物・果実・花・サボテンなど

遅い動作を補うため、食べ物の選び方は「エネルギーを無駄にしない」方向へ進化している。

🌊 2. 移動と生活圏 ― 浅瀬・深場・陸をどう使い分けるか

カメは行動範囲が広く、目的に応じて水辺の環境を使い分ける。

  • 浅瀬:日光で体を温め、藻類や小動物を探す
  • 深場:水温が安定し、外敵に見つかりにくい
  • 陸:産卵・移動・日光浴のために利用

淡水ガメは水陸の往復を日常的に行い、 海ガメは長距離の回遊を行う。 数千キロの海を移動する種も多く、回遊ルートは海流や水温の変化と深く結びついている。

❄️ 3. 越冬と季節 ― 変温動物としての時間の使い方

変温動物であるカメは、季節によって行動を大きく変える。

✔ 越冬(淡水ガメ)

  • 水底で冬眠
  • 泥の中に潜り、代謝を極端に落とす
  • 皮膚や喉の粘膜からわずかに酸素を取り込む

✔ 乾季の対策(リクガメ)

  • 乾燥を避けるため日陰や巣穴に入る
  • 体内に水分を保持する戦略が発達

✔ 海ガメ

  • 水温の高い海域へ移動し、越冬という形をとらないことが多い

「季節の変化をどう越えるか」は、昼行性・夜行性以上にカメの生態を左右する重要な要素だ。

🧭 4. 繁殖行動 ― 記憶と環境を手掛かりにした旅

カメの繁殖行動は、環境と記憶の結びつきが特に強く表れる。

✔ 淡水ガメ

  • 水辺から上陸して砂地・斜面に産卵
  • 産卵場所は水温・日照・土質などを総合して選ぶ

✔ 海ガメ

  • 生まれた浜へ回帰して産卵(位置情報を記憶している)
  • 夜間に砂浜へ上陸し、深い巣穴を掘る
  • 複数回産卵し、ひと夏で100個以上産むこともある

海ガメの回帰は、地磁気・海流・月の明かりなど複数の要因が関わり、 非常に高い方向感覚が必要とされる。 繁殖行動は、カメの“環境を読み取る力”がもっともよく表れる場面のひとつだ。

🌙 詩的一行

水辺の静かな揺れの中で、ゆっくりと選ばれた道が今日も続いていく。

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