🐢カメ12:ウミガメ類 ― 外洋を巡る海の旅人たち

カメシリーズ

― 砂浜から海へ向かう小さな影。その行く先には、何千キロも続く広い外洋がある。ウミガメは、海の中で暮らしながら、産卵の時だけ陸に戻る特別な生活史を持つ。流線形の体、強いヒレ脚、深い海へ潜る能力――どれも長い回遊を支えるために進化してきたものだ。

この章では、ウミガメ類の特徴・生態・回遊・産卵・種類ごとの違いを整理し、“海を旅するカメ”の姿を見つめる。

📘 基礎情報(ウミガメ類)

  • 分類: カメ目 ウミガメ科・タイマイ科 など
  • 分布: 世界の温帯〜熱帯海域
  • 主要種: アオウミガメ/アカウミガメ/タイマイ/オサガメ
  • 体長: 70cm〜2m(種により差)
  • 食性: 海藻・甲殻類・海綿・クラゲなど
  • 寿命: 50〜80年以上
  • 繁殖: 砂浜に産卵(1回50〜150個)、回帰性が強い

🐢目次

🌊 1. 特徴 ― 流線形の体とヒレ脚がつくる“海の形”

ウミガメは、海を長く移動するための身体構造を持つ。

  • 流線形の体:水の抵抗を最小限にする形状
  • ヒレ脚:前脚は推進力、後脚は方向調整
  • 厚い皮膚と脂肪:低い水温にも耐える
  • 長時間潜水:血液に酸素を蓄える能力が高い

地上の歩行は苦手だが、海中では驚くほど滑らかに泳ぐ。

🧭 2. 回遊と移動 ― 数千キロを旅する方向感覚

ウミガメは、海流・水温・地磁気を手がかりに数千キロを旅する回遊性をもつ。

  • 回遊ルート:大陸棚→外洋→沿岸を季節ごとに移動
  • 地磁気の利用:地球の磁場を“地図”として使う
  • 餌場と産卵地:海域ごとに使い分ける
  • 回帰性:生まれた浜に戻る習性がある

ウミガメの旅は長く、種によっては数年かけて太平洋を往復する。

🥚 3. 産卵と成長 ― 砂浜への回帰と子ガメの旅立ち

ウミガメの産卵は、海と陸が交わる短い時間だ。

  • 夜間に上陸:外敵や熱を避けるため
  • 深い穴を掘る:湿度と温度が安定する場所
  • 多数の卵:一度に50〜150個、季節中に複数回
  • ふ化:子ガメは夜に一斉に海へ向かう

子ガメは海に入ると、海流に乗って外洋へ出ていき、数年を“成長の海”で過ごす。

🐢 4. 種類ごとの特徴 ― アオ・アカ・タイマイ・オサガメ

ウミガメ類はいくつかの代表種に分けられ、それぞれに生活の特化方向がある。

✔ アオウミガメ

  • 海藻中心の植物食
  • 甲羅がなめらかで丸みがある

✔ アカウミガメ

  • 強い顎で甲殻類・貝類を砕く
  • 日本沿岸で産卵が見られる代表種

✔ タイマイ

  • サンゴ礁の海綿を主食
  • 甲羅が装飾品に利用され、保全の対象に

✔ オサガメ

  • 最大の現生カメ(2mを超える)
  • クラゲ食が中心で、外洋性が強い

同じ“ウミガメ”でも、食性・形態・暮らす海域は大きく異なる。

🌙 詩的一行

長い波の下をゆっくり進む影は、海の道を静かにたどり続けている。

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