― 水辺の石の上で、ひっそりと体をあたためるカメがいる。イシガメは、日本に古くから生きてきた固有の淡水ガメである。角ばった甲羅、落ち着いた褐色の体、静かに流れの緩い川を歩く姿――その佇まいは昔からの水辺の風景そのものだ。近年は生息地の減少や外来種の影響で数を減らしつつあるが、それでも地域によっては小さな群れが今も息づいている。
この章では、イシガメの特徴・生態・分布・在来種としての価値・保全の課題を整理し、日本固有のカメとしての姿を見つめる。
📘 基礎情報(イシガメ)
- 分類: カメ目 ヌマガメ科 イシガメ属
- 分布: 日本固有種(本州・四国・九州)
- 体長: 15〜25cm
- 食性: 雑食(昆虫・水草・甲殻類・小魚)
- 寿命: 30〜50年
- 特徴: 角張った甲羅・黄色〜橙色の腹甲・流れの緩い川に適応
- 繁殖: 初夏に産卵(5〜15個)
🐢目次
- 🟤 1. 特徴 ― 角ばった甲羅と落ち着いた色の在来種
- 🏞 2. 生態 ― 流れの緩い川を歩く慎重な暮らし
- 🗾 3. 分布と環境 ― 日本固有種が好む水辺
- ⚠️ 4. 減少の背景 ― 外来種・環境変化・在来種としての危機
- 🌙 詩的一行
🟤 1. 特徴 ― 角ばった甲羅と落ち着いた色の在来種
イシガメは、他の淡水ガメに比べて甲羅がやや角ばっているのが特徴だ。
- 角張った背甲:名前の印象通り“石”のような形状
- 腹甲の色:黄色〜橙色で明るい
- 頭部の模様:細い黄色い線が走ることがある
- サイズ:クサガメと同じかやや小型
穏やかな色の個体が多く、日本の水辺になじんだ落ち着きがある。
🏞 2. 生態 ― 流れの緩い川を歩く慎重な暮らし
イシガメの行動は、慎重で静かだ。水底を歩くことが多く、強い流れは苦手とする。
- 食性:雑食で、昆虫・小魚・水草などをとる
- 行動:水底を歩き、泥の中に身を隠すことも
- 体温調節:石や浅瀬で日光浴を行う
- 越冬:泥に潜って代謝を落とす
クサガメと似ているが、より“静かな水辺”を好む傾向があり、人工化された水路にはあまり適応しない。
🗾 3. 分布と環境 ― 日本固有種が好む水辺
イシガメは日本固有の淡水ガメで、主に本州・四国・九州に分布する。自然度の高い環境に依存しやすい。
- 流れの緩い河川:石が多い浅瀬を利用
- 湿地・池:植生豊かで隠れ場所が多い
- 農村の水辺:昔ながらの“ため池文化”に依存
コンクリート護岸の増加やため池の減少は、イシガメの生息に直接影響する。
⚠️ 4. 減少の背景 ― 外来種・環境変化・在来種としての危機
イシガメは近年、全国的に減少傾向にある。その背景には複数の要因が重なる。
- 外来種との競合:アカミミガメが日光浴場所を独占し、餌も奪う
- 環境の改変:ため池の減少・河川の人工化
- 水質悪化:都市部での生存が難しい
- 交雑:クサガメとの交雑が報告されつつある地域も
イシガメは「日本固有の淡水ガメ」であり、地域ごとに保全の動きが広がりつつある。
🌙 詩的一行
石の影に寄り添うように佇むその姿は、静かな水辺が残したやわらかな跡のようだ。
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