🐢カメ11:イシガメ ― 日本固有の静かなカメ

カメシリーズ

― 水辺の石の上で、ひっそりと体をあたためるカメがいる。イシガメは、日本に古くから生きてきた固有の淡水ガメである。角ばった甲羅、落ち着いた褐色の体、静かに流れの緩い川を歩く姿――その佇まいは昔からの水辺の風景そのものだ。近年は生息地の減少や外来種の影響で数を減らしつつあるが、それでも地域によっては小さな群れが今も息づいている。

この章では、イシガメの特徴・生態・分布・在来種としての価値・保全の課題を整理し、日本固有のカメとしての姿を見つめる。

📘 基礎情報(イシガメ)

  • 分類: カメ目 ヌマガメ科 イシガメ属
  • 分布: 日本固有種(本州・四国・九州)
  • 体長: 15〜25cm
  • 食性: 雑食(昆虫・水草・甲殻類・小魚)
  • 寿命: 30〜50年
  • 特徴: 角張った甲羅・黄色〜橙色の腹甲・流れの緩い川に適応
  • 繁殖: 初夏に産卵(5〜15個)

🐢目次

🟤 1. 特徴 ― 角ばった甲羅と落ち着いた色の在来種

イシガメは、他の淡水ガメに比べて甲羅がやや角ばっているのが特徴だ。

  • 角張った背甲:名前の印象通り“石”のような形状
  • 腹甲の色:黄色〜橙色で明るい
  • 頭部の模様:細い黄色い線が走ることがある
  • サイズ:クサガメと同じかやや小型

穏やかな色の個体が多く、日本の水辺になじんだ落ち着きがある。

🏞 2. 生態 ― 流れの緩い川を歩く慎重な暮らし

イシガメの行動は、慎重で静かだ。水底を歩くことが多く、強い流れは苦手とする。

  • 食性:雑食で、昆虫・小魚・水草などをとる
  • 行動:水底を歩き、泥の中に身を隠すことも
  • 体温調節:石や浅瀬で日光浴を行う
  • 越冬:泥に潜って代謝を落とす

クサガメと似ているが、より“静かな水辺”を好む傾向があり、人工化された水路にはあまり適応しない。

🗾 3. 分布と環境 ― 日本固有種が好む水辺

イシガメは日本固有の淡水ガメで、主に本州・四国・九州に分布する。自然度の高い環境に依存しやすい。

  • 流れの緩い河川:石が多い浅瀬を利用
  • 湿地・池:植生豊かで隠れ場所が多い
  • 農村の水辺:昔ながらの“ため池文化”に依存

コンクリート護岸の増加やため池の減少は、イシガメの生息に直接影響する。

⚠️ 4. 減少の背景 ― 外来種・環境変化・在来種としての危機

イシガメは近年、全国的に減少傾向にある。その背景には複数の要因が重なる。

  • 外来種との競合:アカミミガメが日光浴場所を独占し、餌も奪う
  • 環境の改変:ため池の減少・河川の人工化
  • 水質悪化:都市部での生存が難しい
  • 交雑:クサガメとの交雑が報告されつつある地域も

イシガメは「日本固有の淡水ガメ」であり、地域ごとに保全の動きが広がりつつある。

🌙 詩的一行

石の影に寄り添うように佇むその姿は、静かな水辺が残したやわらかな跡のようだ。

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