― 早春の田んぼに、まだ冷たい風の中でも動き始める小さな影がある。ニホンアカガエルは、冬の終わりを告げる最初の生きものの一つ。落ち葉の色に溶ける赤みの体をそっと揺らし、水面へ近づいていく。その姿は、季節が静かに切り替わる瞬間を知らせてくれる。
🐸目次
📘 基礎情報
- 分類: アカガエル科 アカガエル属
- 学名: Rana japonica
- 分布: 本州・四国・九州
- 体長: 約3〜5cm
- 食性: 昆虫・クモ(幼生:藻類・デトリタス)
- 繁殖期: 1〜3月/浅い止水で卵塊を産む
- 特徴: 背中の赤み・早春繁殖・里山環境に多い
🐸 1. ニホンアカガエルという存在
ニホンアカガエルは、日本の里山の季節を静かに知らせる存在だ。冬の冷たさが残る時期から動き始め、ほかのカエルが春の到来を待つ中、ひと足早く産卵を行う。落ち葉色の体は背景にとけ込み、控えめだが確かな生命感をもつ。
🪰 2. 生態と行動
最大の特徴は「早春繁殖」。低水温にも耐える卵をもち、浅い水たまりでも産卵する。普段は湿った林床で過ごし、昆虫を探して静かに動く。夜行性だが、気温が低い日には日中に動く姿も見られる。
- 冬の終わり〜早春に活動がピーク
- 林床や落ち葉下で生活
- 控えめな鳴き声
🌿 3. 環境と分布
本州から九州まで広く分布し、雑木林と田んぼが接する里山に多い。浅い止水環境を必要とするため、農地の水管理や湿地の消失が影響しやすい。都市部では減少傾向だが、湿地が残る公園では見られることもある。
🔎 4. 観察のポイント
最も観察しやすいのは冬の終わり。透明な卵塊を探すと、その周囲で静かに動く成体を見つけられる。雨上がりの小さな水たまりが特にねらい目。
- 卵塊は丸く大きめ
- 雨後の浅い水たまりがよい
- 夜の林道で出会うことも
🌙 詩的一行
冷たい水に置かれた小さな息づかいが、静かな季節をほんのりと押し開いていく。
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