🦠 カビ26:宗教と象徴 ― 腐敗と再生のイメージ ―

カビは、長いあいだ、 人間の理解を超えた変化の象徴として扱われてきた。

それは、 害だからでも、 役に立つからでもない。

人の意志とは無関係に、 物が別の状態へ移っていく

宗教や信仰は、 この制御できない変化に意味を与えるために、 カビや菌類を語りの中に組み込んできた。

🦠 目次

⛩️ 1. 腐敗=穢れ ― 境界を示す徴

多くの宗教文化において、 腐敗は「穢れ」と結びつけられてきた。

死体、傷んだ食物、 形を失ったもの。

それらは、 生の秩序から外れた状態として扱われ、 距離を取るべき対象とされた。

カビは、 その変化を目に見える形で示す存在だった。

見えない内部の変質が、 表面に現れる。

宗教的忌避の多くは、 危険そのものではなく、 境界を越えたことを知らせる徴に向けられていた。

カビは、 「ここから先は戻れない」 という線を引く役割を担っていた。

🌾 2. 分解=循環 ― 再生の前段として

一方で、 分解は破壊としてだけ理解されてきたわけではない。

農耕文化や自然信仰において、 朽ちたものが土に還り、 次の実りを支えるという循環は、 世界の基本構造として共有されていた。

ここで重要なのは、 再生の瞬間そのものは見えないという点だ。

種が芽吹く前に、 無数の分解が起きている。

カビや菌類は、 この不可視の工程を担う存在として、 意識されていた。

破壊者ではなく、 次の状態を準備する者

宗教的物語の中で、 菌的存在は、 終わりと始まりをつなぐ役を与えられてきた。

🦠 3. なぜ「菌」が象徴になったのか

なぜ、 数ある生き物の中で、 菌類が象徴として選ばれたのか。

理由は、 その性質にある。

  • 動かないのに、変化を進める
  • 増えるが、意思は見えない
  • 見えないまま進行し、突然現れる
  • 人の管理を簡単に超える

菌類は、 人間の因果理解から外れた存在だった。

努力でも、 祈りでも、 完全には止められない。

だからこそ宗教は、 菌を「制御できない変化」の象徴として用いた。

カビは、 善でも悪でもない。

人の世界が完全ではないことを、 沈黙のまま示す存在だった。

🫧 詩的一行

カビは、意味を失う瞬間に、人が意味を与えた存在でもある。

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