🐟イワシ14：人と海の知恵 ― 共に暮らす社会 ―

― 海を知るとは、暮らしを知ること ―

イワシを追う人々の暮らしは、いつも海と向き合うことから始まる。天気図よりも空の色、時計よりも潮の動き。自然を読み、感じることが、長く生きるための知恵だった。

🌾目次

古い漁師たちは、海の色や鳥の飛び方で群れの位置を知った。波の向き、風の匂い、潮の速さ。それらを“感じる力”が、どんな機械よりも正確な羅針盤だった。
科学が進んでも、その感覚は今も漁の根っこに残っている。

漁が終われば、港に笑い声が戻る。網を直す手、干物を並べる手、子どもたちの遊ぶ声。そのすべてが、海の時間の中にある。
天候や群れの変化で暮らしは揺れるけれど、人はそれを“受け入れる”ことを覚えてきた。変わる海に抗うより、その流れの中で生きる方が自然だからだ。

イワシの料理は、海の知恵そのものだ。干す、煮る、酢で締める―― それぞれの土地の気候や保存法が生んだ工夫。
食べることは、生きることを確かめる行為。旬を待ち、形を変えながら、人と海の関係は今も続いている。

便利さのなかで失われた感覚を、もう一度取り戻すときが来ている。海を知るとは、その変化に寄り添って生きることだから。

海と人のあいだに、暮らしの呼吸がある。