― 人と獣のあいだ ―
夜の田畑に、静かな気配が落ちる。
電灯の下、黒い影が動く。
人の手で耕された土地に、森の獣が現れる。
その境に、いまの日本の自然が映っている。
🌾目次
🌱 夜 ― 里に降りる理由
山の実りが減ると、イノシシは食を求めて里に降りる。
ドングリの凶作、山林の伐採、気候の変化。
森が痩せれば、境界はあいまいになる。
夜の闇に紛れて、田畑に現れ、掘り返し、荒らす。
それは生きるための行動であり、
人の作った“境界線”を超える瞬間でもある。
🌿 被害 ― 人と作物のあいだで
稲、トウモロコシ、サツマイモ。
イノシシが選ぶのは、栄養の多い作物ばかり。
被害として語られるその行為の裏には、
森の減少と食物の偏りがある。
人にとっては損失でも、
イノシシにとっては生の延長線上にある日常だ。
それをどこまで“被害”と呼ぶのか。
問いは、私たちの暮らしの中にも向けられている。
🔥 共存 ― 境界を見つめる目
電気柵や捕獲檻が増える一方で、
人とイノシシが共に暮らす試みも始まっている。
地域によっては、狩猟と活用を組み合わせ、
命を無駄にしない仕組みを作る動きもある。
森と人の境界は、排除ではなく調整の線へ。
夜の畑に現れる影を、敵ではなく隣人として見る視点。
それが次の時代の“里山の知恵”なのかもしれない。
🌙 詩的一行
光と闇のあいだで、命はどちらにも属している。
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