― 風のなかで光を集める面 ―
田んぼを渡る風に、一面の葉がゆれている。
薄く、細く、折れそうに見えて──それでも稲の葉は強い。
光をつかみ、水を蒸らし、身体全体を支えるための“翼”として働く。
そのしくみを知ると、一枚の葉の中に広がる世界が見えてくる。
🌾目次
- 🌿 葉の形と構造 ― 稲らしさをつくる細長い形
- 🌞 光合成の仕組み ― 光を食べる草
- 💧 蒸散と水の流れ ― 葉がつくる循環
- 🌬 風に強い理由 ― 曲がり、戻る薄い刃
- 🌾 葉色と稲の健康 ― “緑”が語るもの
- 🌙 詩的一行
🌿 葉の形と構造 ― 稲らしさをつくる細長い形
稲の葉は、細長い線のように伸びる。
これは光を広く受けながら、風を逃がすための形だ。
葉の構造は大きく3つに分かれる。
・葉身 …… 細長く、光を受ける“面”
・葉鞘 …… 茎を包み、植物体を支える筒状
・葉舌・葉耳 …… 葉鞘と葉身の境目の小さな器官
とくに葉鞘は、茎を守る役割も大きい。
雨や泥が入り込むのを防ぐ“盾”でもある。
🌞 光合成の仕組み ― 光を食べる草
葉は、稲の“台所”にあたる。
光を受け、空気中の二酸化炭素を取り込み、
光合成によって糖をつくる。
つくられた糖は茎を通って穂へ送られ、
米の中に蓄えられていく。
稲の葉は、光の角度に合わせてわずかに向きを変える性質がある。
これは効率よく光を受け取るための調整で、
田んぼ全体が一枚の大きな光受容体のように働く理由でもある。
💧 蒸散と水の流れ ― 葉がつくる循環
葉の裏側には気孔があり、ここから水分が蒸発(蒸散)する。
この働きによって、根から水が吸い上げられ、植物全体に流れていく。
・蒸散がある → 水が引き上げられる
・水が流れる → 養分も運ばれる
・葉が働く → 稲全体が動く
稲の葉は、光を受けるだけでなく、
植物体の水の循環すべてを動かす“エンジン”でもある。
🌬 風に強い理由 ― 曲がり、戻る薄い刃
稲の葉が風に揺れても折れないのは、
繊維の走り方と薄い葉身のしなりのおかげだ。
縦方向に走る繊維が風を受け流し、
曲がってもすぐに戻る弾性がある。
田んぼが“波”のように揺れるのは、葉のしなりが生む風景でもある。
🌾 葉色と稲の健康 ― “緑”が語るもの
農家は葉色を見るだけで、稲の健康状態を判断する。
色は、そのまま栄養バランスのサインになる。
・鮮やかな緑 → 光合成がよく働き、成育順調
・濃すぎる緑 → 窒素過多(倒伏のリスク)
・黄緑がかる → 栄養不足や病気の兆候
葉は、稲の“声”でもある。
日差しの中に立つ色のわずかな変化が、植物の今を教えてくれる。
🌙 詩的一行
光に指を伸ばすように、稲の葉は空へ広がっていく。
コメント