🌾 イネ6:葉 ― 光をつかむ薄い翼

イネシリーズ

― 風のなかで光を集める面 ―

田んぼを渡る風に、一面の葉がゆれている。
薄く、細く、折れそうに見えて──それでも稲の葉は強い。
光をつかみ、水を蒸らし、身体全体を支えるための“翼”として働く。
そのしくみを知ると、一枚の葉の中に広がる世界が見えてくる。


🌾目次


🌿 葉の形と構造 ― 稲らしさをつくる細長い形

稲の葉は、細長い線のように伸びる。
これは光を広く受けながら、風を逃がすための形だ。

葉の構造は大きく3つに分かれる。

葉身 …… 細長く、光を受ける“面”
葉鞘 …… 茎を包み、植物体を支える筒状
葉舌・葉耳 …… 葉鞘と葉身の境目の小さな器官

とくに葉鞘は、茎を守る役割も大きい。
雨や泥が入り込むのを防ぐ“盾”でもある。


🌞 光合成の仕組み ― 光を食べる草

葉は、稲の“台所”にあたる。
光を受け、空気中の二酸化炭素を取り込み、
光合成によって糖をつくる。

つくられた糖は茎を通って穂へ送られ、
米の中に蓄えられていく。

稲の葉は、光の角度に合わせてわずかに向きを変える性質がある。
これは効率よく光を受け取るための調整で、
田んぼ全体が一枚の大きな光受容体のように働く理由でもある。


💧 蒸散と水の流れ ― 葉がつくる循環

葉の裏側には気孔があり、ここから水分が蒸発(蒸散)する。
この働きによって、根から水が吸い上げられ、植物全体に流れていく。

・蒸散がある → 水が引き上げられる
・水が流れる → 養分も運ばれる
・葉が働く → 稲全体が動く

稲の葉は、光を受けるだけでなく、
植物体の水の循環すべてを動かす“エンジン”でもある。


🌬 風に強い理由 ― 曲がり、戻る薄い刃

稲の葉が風に揺れても折れないのは、
繊維の走り方薄い葉身のしなりのおかげだ。

縦方向に走る繊維が風を受け流し、
曲がってもすぐに戻る弾性がある。
田んぼが“波”のように揺れるのは、葉のしなりが生む風景でもある。


🌾 葉色と稲の健康 ― “緑”が語るもの

農家は葉色を見るだけで、稲の健康状態を判断する。
色は、そのまま栄養バランスのサインになる。

・鮮やかな緑 → 光合成がよく働き、成育順調
・濃すぎる緑 → 窒素過多(倒伏のリスク)
・黄緑がかる → 栄養不足や病気の兆候

葉は、稲の“声”でもある。
日差しの中に立つ色のわずかな変化が、植物の今を教えてくれる。


🌙 詩的一行

光に指を伸ばすように、稲の葉は空へ広がっていく。


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