🌾 イネ16:土壌と水管理 ― 根を支える見えない仕事

イネシリーズ

― 土と水のあいだで、稲は立っている ―

田んぼに立つ稲は、風に揺れる軽やかな姿を見せる。
けれど、その足元では土と水が複雑に働き、根を支えつづけている。
土壌は栄養と空気を、水管理は温度と環境をととのえる。
この“見えない仕事”が整ってこそ、稲はまっすぐに育ち、実りへ向かう。


🌾目次


🌱 土壌の役割 ― 栄養・空気・水を支える場所

稲が育つ土壌は、単なる“地面”ではない。
そこには無数の粒子と微生物がいて、絶えず働き続けている。

栄養を保持する(窒素・リン酸・カリなど)
水を蓄え、必要なときに渡す
・根に酸素を送る空気の道をつくる
・有機物を微生物が分解して肥沃さを生み出す

土壌が締まりすぎても、柔らかすぎても根は伸びない。
「ちょうどよい土」を保つことが、稲作の基本になる。


💧 水管理とは ― 稲作の基盤になる操作

水田ならではの技術が水管理
水の高さ・流れ・温度を調整し、稲が育ちやすい環境を整える。

・気温が低い日は水を深くして保温する
・株が増える時期は浅くして光をあてる
・病害が出やすいときは水を動かし、淀みを減らす
・収穫前には落水して根を締め、作業しやすくする

水は“稲の呼吸を助ける布団”のようなもの。
その調整を農家は毎日続けている。


🌾 代かき ― 土をととのえるための準備

田植え前に行われる代かきは、土に水を混ぜて平らにし、田んぼの状態を整える作業。

・雑草の芽を土の下に埋め込む
・土の凹凸をなくし、水を均一に張れるようにする
・苗の根がまっすぐ伸びやすい環境を作る

最近は機械化されているが、代かきの仕上がりによって、田植え後の成長に大きな差が出る。
きれいに均された田んぼほど、苗がそろって育ちやすい。


🌊 深水・浅水・中干し ― 成長段階で変わる水の高さ

稲は一生の中で、水の高さによって成長のしかたが変わる。

深水 …… 初期に保温し、雑草の発生を抑える
浅水 …… 分げつ期に光を与え、株を広げやすくする
中干し …… 土を一時的に乾かし、根を強くして倒伏を防ぐ
落水 …… 収穫前に水を抜き、土を締めて作業しやすくする

「どの時期にどの高さで水を張るか」。
これが収量と品質を左右する、稲作の重要なポイントのひとつになっている。


🧪 土の状態と収量 ― 見えない場所が左右する結果

土壌の質は、最終的な収量に直結する。

・団粒構造がしっかりしているか
・有機物が適度に含まれているか
・pHが稲に適した範囲にあるか
・根が酸素を得られる空気のすき間があるか

とくに団粒構造(土が適度に団子状にくっついた状態)は、
水はけと保水性、通気性のバランスが良く、稲がのびのび育つ理想の環境をつくる。

見えないところで支えるこの“土の健康”が、
結果として実りの大きさを決めていく。


🌙 詩的一行

静かな土の奥で、見えない手が稲をそっと支えている。


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