🌾 イネ14:稲刈り・脱穀 ― 実りを受けとる仕事

イネシリーズ

― 黄金の時間に触れる ―

登熟を終えた田んぼは、風が吹くたびに穂が波のように揺れる。
その黄金色の風景に、いよいよ人の手が入る。
鎌で刈り取る瞬間。機械の刃がゆっくり動き出す音。
稲刈りとは、季節を受けとる行為そのものだ。
そして刈り取られた稲は脱穀(だっこく)によって粒として分かたれ、米という形へ近づいていく。


🌾目次


🌾 稲刈りの適期 ― 「刈りどき」を決める判断

稲刈りは「色がついたら終わり」ではない。
農家は細かなサインを見て、最適な刈りどきを判断している。

・籾の色が青みを失い、黄金色に変わる
・籾の水分が20〜25%前後まで下がる
・穂先と根元の粒が、どちらもよく実っている
・茎がしなやかで、倒れにくい状態を保っている

早すぎれば粒が軽く、遅すぎれば過熟や倒伏の原因になる。
「刈りどき」は一年の積み重ねが報われるかどうかを決める、緊張を含んだタイミングだ。


🔪 稲刈りの方法 ― 手刈りと機械刈り

稲刈りには大きく分けて2つの方法がある。

手刈り …… 鎌で根元を切り、束ねて天日干しする昔ながらの方法
機械刈り …… コンバインを使い、刈り取りと脱穀を同時に行う方法

手刈りは時間と手間がかかるが、干し方を工夫することで、
ゆっくりと水分が抜け、風味のよい米に仕上がるといわれている。
一方で現代の多くの田んぼでは、効率の高いコンバインが主役になっている。


🌬 乾燥の役割 ― 風と時間が粒を守る

刈り取った稲は、そのままでは粒の水分が多すぎて保存できない。
そこで欠かせないのが乾燥の工程だ。

・はざがけなどによる天日干し
・乾燥機を使った温風乾燥

目標となる水分はおよそ15%前後
これより高いとカビが生えやすく、低すぎると粒が割れやすい。
乾燥は、“米を米として扱えるようにするための最終調整”でもある。


⚙️ 脱穀 ― 粒を稲から分ける作業

脱穀とは、稲の穂から籾を取り外す工程のこと。
現在はコンバインが刈り取りと同時に脱穀を行うのが一般的だ。

手作業の場合は、
・足踏み脱穀機で穂から籾を外す
・唐箕(とうみ)で風を使ってゴミを吹き飛ばす
といった昔ながらの道具が用いられてきた。

脱穀を終えた籾は、さらに籾すりによって殻をはぎとられ、玄米へと姿を変える。
この一連の流れの先に、ようやく食卓の米がある。


📈 収量と品質 ― 稲刈りで決まる“最後の差”

稲刈りと脱穀は、単なる作業ではなく、品質を左右する最後の山場でもある。

・刈り遅れ → 過熟粒や倒伏が増え、胴割れや品質低下の原因に
・早刈り → 粒が軽く、収量そのものが落ちる
・乾燥の仕上がり → 食味と保存性に直結する

一年の積み重ねが、ここで初めて「実り」として形になる。
稲刈りは、その収穫を確かなものにするための、最後のていねいな仕事だ。


🌙 詩的一行

刈り取る手のぬくもりに、季節がそっと落ちついていく。


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