― 濃い紫の粒が、失われた稲の姿を思い出させる ―
黒米は、古くから存在した稲の「色を持つ品種」。 その表皮にはアントシアニン色素が豊富に含まれ、 炊くと深い紫色に染まるのが特徴だ。 白米が主流になる前、これらの色つきの米は 祝い事や薬として大切に扱われてきた。
まずは、黒米という粒を理解するための基礎情報をまとめて見ていこう。
📘 黒米の基礎情報(図鑑形式)
分類: イネ(Oryza sativa)の一系統/古代米の代表
色の正体: アントシアニン(主成分:シアニジン-3-グルコシド)
起源: 中国南部〜東南アジア(紀元前から存在)
日本での歴史: 奈良〜平安期の記録に登場/薬米・祝い米として使用
栄養: アントシアニン、鉄分、ビタミンB群、食物繊維(白米の約6倍)
味・特徴: 香ばしい香り/もち性が強い系統が多い/炊くと紫色に染まる
主な品種: 朝紫、朝紫糯、紫黒米、紫宝、地域在来の黒米
主な用途: 雑穀ブレンド、餅・和菓子、薬膳、赤飯代用、ご飯の彩り
🌾目次
- 🌑 黒米とは ― 色を持つ稲の古い系統
- 🧬 色の正体 ― アントシアニンのしくみ
- 🥣 栄養と効能 ― 白米より豊かな成分
- 🍚 味と食文化 ― 紫に染まる食卓
- 🌾 品種と栽培 ― 古い遺伝子を受け継ぐ稲
- 🌙 詩的一行
🌑 黒米とは ― 色を持つ稲の古い系統
黒米(くろまい)は、玄米の表皮に濃い紫色の色素を蓄えた古い稲の系統。 炊くと全体が紫色に染まり、独特の香りと味わいを持つ。
・イネ(Oryza sativa)の変異系統 ・ジャポニカにもインディカにも黒米遺伝子は存在 ・精白すると色が消える(色素はぬか層に集中)
かつては「薬米」「祝いの米」とされたが、 白米の普及とともに姿を消し、 近年、雑穀文化や健康志向によって再び注目を集めている。
🧬 色の正体 ― アントシアニンのしくみ
黒米の色はアントシアニンによって生まれる。 主に「シアニジン-3-グルコシド(C3G)」が高濃度で存在し、 これが深い紫〜黒の色を作り出す。
アントシアニンの特徴:
- 強い抗酸化作用
- 熱で色が溶け出し、炊飯後に紫色が広がる
- 白米と混ぜると美しい淡紫色を作る
黒米は“黒い米”ではなく、 実際には非常に濃い紫色の米だ。
🥣 栄養と効能 ― 白米より豊かな成分
黒米は白米とは比べものにならないほど栄養が豊か。 特にアントシアニンとミネラル類が多い。
・アントシアニン(抗酸化作用) ・鉄分・亜鉛 ・ビタミンB群 ・食物繊維が白米の約6倍 ・タンパク質もやや多い ・GI値が低めで血糖をゆるやかにする
古代に「薬米」とされた背景には、 こうした成分の豊かさがある。
🍚 味と食文化 ― 紫に染まる食卓
黒米は香ばしく、もち性が強いものが多い。 白米に混ぜると全体が優しい紫色に染まり、 古代米らしい豊かな風味が広がる。
主な使い方:
- 雑穀ブレンド米
- 餅・団子・和菓子
- 赤飯の代わり
- おにぎり・炊き込み
- 薬膳・中華の甘味
🌾 品種と栽培 ― 古い遺伝子を受け継ぐ稲
黒米は「品種名ではなく系統名」で、 国内外にさまざまな系統が存在する。
・朝紫(あさむらさき) ・朝紫糯 ・紫黒米(しこくまい) ・紫宝(しほう) ・地域在来の黒米(東北・九州など)
草丈が高く倒伏しやすい系統が多く、 収量も白米より少ないため、 文化的価値や在来品保存の目的で作られることが多い。
🌙 詩的一行
深い紫の粒が、忘れられた季節を静かに照らす。
🌾イネシリーズ外伝(古代米・もち米)
イネシリーズ本編20話の外側で、古代米ともち米を掘り下げた特集です。
黒米・赤米・緑米・もち米それぞれの特徴と歴史、食文化との関わりをまとめています。
- 💡今ココ→🌑 黒米とは ― 紫の粒が語る古い稲の記憶 ―
- ❤️ 赤米とは ― 日本の源流に残る“最初の稲” ―
- 💚 緑米とは ― 山里に残る香り高い古代の粒 ―
- 🤍 もち米とは ― 粘りの稲がつくってきた日本の食文化 ―
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