ヒラメの体は、どこか不自然に見える。
左右が揃わず、片側に機能が集まり、
魚として「歪んで」いる。
だがこの歪みは、失敗ではない。
むしろ、ひとつの環境に徹底的に合わせた結果だ。
ここまで見てきたヒラメの姿を、
もう一度、設計という視点から束ねてみる。
🟦 目次
🏗 1. 歪みは欠陥ではない
左右対称であることは、多くの生物にとって基本だ。
だがヒラメは、その前提を手放した。
体を横倒しにし、
目を片側に集め、
もう一方を「使わない側」として定める。
この選択は、
可能性を狭めたように見える。
だが実際には、
砂底という場所での自由度を大きく広げた。
歪みは、
制限ではなく、
役割を明確にするための線引きだった。
👁 2. 見るための体、伏せるための体
ヒラメの体は、二つの面に分かれている。
上側は、見るための面。
下側は、伏せるための面。
この分業があるからこそ、
ヒラメは長時間、
砂底にとどまることができる。
動かず、
目立たず、
だが常に周囲を把握している。
ヒラメの体は、
行動を減らすことで、
判断の精度を高める設計だ。
🌊 3. ひとつの場所に特化するということ
ヒラメは、
どこへでも行ける魚ではない。
砂底がなければ、
その設計は成立しない。
伏せられる場所があって、
初めて意味を持つ。
その代わり、
条件がそろった場所では、
高い完成度を発揮する。
広く適応するのではなく、
深く適応する。
それがヒラメの選んだ道だ。
🧭 4. 完成形としてのヒラメ
ヒラメは、
進化の途中で止まった存在ではない。
砂底に伏すという生活において、
無駄な部分は、ほとんど残っていない。
動かないこと。
見えなくなること。
一度で決めること。
それらが、
ひとつの体に無理なく収まっている。
ヒラメは、
歪みを抱えたまま、
完成している魚だ。
🌊 詩的一行
ヒラメは、歪むことで、海底に最適な形を手に入れた。
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