ヒラメは、言葉の中でも生きている。
料理名や図鑑の項目だけでなく、
たとえ話や俗語の中にも、その姿は現れる。
それらの言葉は、
ヒラメの生態を正確に説明するためのものではない。
だが、人がこの魚をどう見てきたかは、
確かに映し出している。
ここでは、
言葉と比喩の中に残ったヒラメを見ていく。
🟦 目次
🗣 1. 「ヒラメ目」という言い回し
「ヒラメ目」という言葉は、
相手の顔色をうかがい、
意見を持たずに従う人を指す比喩として使われる。
由来は明確だ。
平たい顔で、
常に上を向いているように見える目。
そこから、
「上を見るだけ」「考えない」という印象が、
人の行動に重ねられた。
ヒラメの生態とは、
ほとんど関係がない。
だが見た目だけで、
意味が付与された例だ。
🧠 2. 見るだけ、動かないという評価
ヒラメは、確かに動かない魚だ。
砂底に伏し、
長い時間、周囲を見ている。
その姿が、
「何もしない」「受け身」という評価につながった。
だが実際には、
ヒラメは常に判断している。
動かないのは、
動く必要がないからだ。
言葉の中のヒラメは、
この判断の部分を切り落としている。
🟦 3. 「座布団ヒラメ」という比喩
もう一つのよく知られた表現が、
「座布団ヒラメ」だ。
大きく平たい体を、
座布団に見立てた呼び方。
親しみと、少しの軽視が混じっている。
この言葉には、
恐れや畏敬はない。
どこか、
扱いやすい存在としての距離感がある。
ヒラメが、
生活に近い魚であったことが、
こうした比喩を生んだ。
📚 4. 生態と言葉のずれ
言葉の中のヒラメは、
実際のヒラメとは、かなり違う。
受け身で、
考えず、
動かない存在。
だが生態としてのヒラメは、
選び、待ち、
一瞬で決める捕食者だ。
このずれは、
間違いではあるが、
同時に文化でもある。
人は、
理解しやすい一面だけを切り取り、
言葉にしてきた。
🌊 詩的一行
ヒラメは、見た目だけを借りられて、言葉の中で別の役を演じてきた。
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