海底で、乾いた音が鳴る。水中では不釣り合いに鋭いその音は、目に見えない出来事の結果だ。
テッポウエビは、体の一部を使って衝撃波を生み出す。獲物を驚かせ、時に気絶させるための仕組みである。
だがこのエビの特徴は、それだけではない。ハゼと共に暮らし、役割を分け合うことで、海底に安定した居場所をつくってきた。
ここでは、テッポウエビという生き物の、音と関係性に注目する。
【基礎情報】
- 和名:テッポウエビ
- 別名:ピストルシュリンプ
- 英名:Pistol shrimp
- 学名:Alpheidae科 各種
- 分類:節足動物門/甲殻亜門/軟甲綱/十脚目/テッポウエビ科
- 分布:熱帯〜温帯の沿岸域
- 主な生息環境:浅海の砂底・岩礁域
- 水深:潮間帯〜数十m
- 体長:数cm前後
- 食性:小型生物・有機物
- 繁殖:抱卵後に幼生が浮遊
- 特徴:片側のハサミが極端に発達
- 人との関わり:研究対象・観察対象
- 保全・注意点:生息環境の保全が重要
🦐 目次
🔊 1. 音を出すしくみ ― 衝撃波の発生
テッポウエビは、発達したハサミを高速で閉じることで、水中に衝撃波を生み出す。
- 動作:ハサミを瞬間的に閉じる
- 現象:キャビテーション
- 効果:獲物を驚かせる・気絶させる
このとき生じる音は、水中で非常に大きく、周囲の生き物にも影響を与える。
🦐 2. 体の特徴 ― 非対称なハサミ
テッポウエビの最大の特徴は、左右で大きさの異なるハサミだ。
- 利きハサミ:大型で音を出す
- 反対側:小型で操作用
- 再生:失っても入れ替わる
大型のハサミを失っても、小さい方が成長して役割を引き継ぐ。この柔軟さも、生き残りの一因である。
🏠 3. ハゼとの共生 ― 役割分担の生活
多くのテッポウエビは、ハゼと共生関係を結ぶ。
- エビ:巣穴を掘る
- ハゼ:外敵を見張る
- 連携:触角で合図
視力の弱いエビは、ハゼの動きを触角で感じ取り、危険を察知する。
互いの弱点を補うことで、単独では難しい生活が可能になる。
🌊 4. 海底での位置 ― 見えないが重要な存在
テッポウエビは小型で目立たないが、海底の環境形成に関わっている。
- 行動:巣穴掘り
- 影響:底質の攪拌
- 役割:微小生態系の形成
巣穴の存在は、他の小型生物にも影響を与える。音だけでなく、行動そのものが環境を変えている。
🌙 詩的一行
音の奥で、役割が静かに続いている。
🦐→ 次の記事へ(エビ16:オキアミ)
🦐← 前の記事へ(エビ14:ボタンエビ/アマエビ)
🦐→ エビ(海)シリーズ一覧へ
コメント